大学入試に向けて勉強している我が子(高校生)に向かって、
「浪人はさせないからね!」と言う親は多い。
そりゃぁ、「我が家は何度でも浪人してOK!」なんて言う親はいない。
浪人はさせない!そんなお金の余裕はウチにはない!と言うことで、
後がないと思って必死に勉強しなさい!と伝えたいのだろう。
「○○以下の大学は受けさせない!」
「○○以下の大学に行くくらいなら働け!」
と、こういうことを言う人もいるが、これも先の言葉と同じで、
背水の陣だと思って、自分を追い込んで勉強しろ!という意図なのだろう。
まぁ、言いたいことはわからなくもない。
勉強に身の入っていない様子を見せられもすれば、
本気でやれよ!自分の人生だぞ! と、我が子の将来を案じつつ、
親の方が焦ってしまって、イヤミの1つも言いたくなるのだろう。
だけど、ハングリー精神の名残のようなものが、
まだどうにかあった昭和ならいざ知らず、令和の時代に、
この声かけで奮起する子が、どのくらいいるだろうか。
浪人させない、○○以下への進学は認めないというプレッシャーに耐えられず、
空回りの勉強になったり、不安やストレスで心を病んだりするかもしれない。
大きな結果を求められることで、むしろ委縮してしまうかもしれない。
近頃は、社会に出るのが1年遅れると生涯年収が…
なんて話も耳にする時代だけれど、
責任ばかり増えて休みが減るくらいなら、出世なんぞ望まない!
という人が多くなっている時代でもある。
生涯年収なんて言葉でヤル気になるとも思えない。
とにかく、成人となった高校生でさえ、
この声かけではうまくいかない可能性が高いと思う。
もっと言ったら、社会人(例えば、会社にいる部下)相手にだって、
こんな声のかけ方をしたら、パワハラだ、モラハラだと言われて問題になる。
よりよい結果を手にさせてあげたいと思っているなら、いや、それよりも、
精一杯頑張ったときに得られる、結果以上の経験をさせたいと思っているなら、
先の声かけの仕方は、逆効果になると思う。
大体、昭和生まれの親世代だって、高校生当時に、
無理やり背水の陣に置かれて、十分な力を発揮できただろうか。
自分の意思で背水の陣をしける人とは違うのだ。
大人だって、何か大きな仕事を任された場合に、
人生かけてこの仕事に取り組みたい!と自分で思った人と、
この仕事を成功させなければクビだ!と言われた人とでは、
その仕事に対するモチベーションは全然違うだろう。
自分は昔そうやって自分を追い込んでやってきたからという理由で、
子どもや他の人にもそれを当てはめ、押し付けるのは、
近頃ようやく問題視されるようになった体育会系の指導法と
そんなに変わらないんじゃないかと思う。