ここ数年、めっきりそういう機会は減ってしまったが、
数年前までは、仕事終わりに何人かの先生で連れだって、
ご飯を食べに行くことも珍しくなかった。
僕らの仕事終わりに開いているお店なんて、数年前でも、
ファミレスか中華料理屋、あるいは居酒屋くらいしかなかったけれど、
ファミレスを除けば、とにかくS先生のモテっぷりが半端なかった。
モテっぷりと言っても、女性に人気があるとか、そういうことではなくて、
なぜか、S先生だけ「サービスです!」と、
頼んだ料理が大盛りになったり、頼んでもいない一品がついてきたりするのだ。
何度も足を運んだことのある馴染みの店ならまだしも、
初めて行ったお店でさえ、こういうことが頻繁に起きる。
(何を飲んでいるかは書かないが)飲みっぷりがいいことも一因だとは思うけれど、
僕の知らないところで、見えない力が働いていて、それこそ飲食店ぐるみで、
極秘プロジェクト『天高く熊肥ゆる秋』が進行しているかのようだ。
それにしても、このあからさまな「えこひいき」が起きるのはなぜなのだろうか。
極秘プロジェクトでないならば、おそらく、要因はこういうことだろう。
S先生は、初めて訪れたお店でも、笑顔で明るく、積極的にコミュニケーションをとる。
僕のようなタイプからすると、少々うざったいと感じるほどだが、
「今日暑いですね」「オススメは?」「これ、ホント美味しいっすね!」
などと、料理を運んでくる人だけでなくて、料理を作っている人とも会話する。
隣のテーブルの、初めて会った人と会話していることもある。
先日も、仕事帰りの東戸塚駅で、(僕は全く知らない)男性に挨拶していたので、
S先生に「どなたですか?」と尋ねたら、
「あぁ、あの人は◎◎◎◎◎でよく会う人!」と返ってきた。
さて、S先生のことは全くもってどうでもいいのだが、
しかし、ここに世の中の揺るぎない事実があることも確かだ。
それは、社交性があった方が、良いサービスを受けられる可能性が高い
ということである。
もちろん、根っから社交的な人でもない限り、
見知らぬ人と会話すること自体がストレスということもある。
僕自身も、洋服を買うためにお店に入ったのに、
スルスルと近寄ってきた店員さんに話しかけられるだけで、
何も買わずにそのお店を出たくなるタイプだから、
社交性がとか、コミュニケーション能力がとか、
そういうことばかりが強調される最近の風潮は苦手である。
(そして、そういうことで評価される内申点というシステムも苦手である。)
だが、S先生だけサービスされるのが、揺るがぬ事実である。
社交性があって、プレゼン能力がある方が、良い内申点になるのも事実である。
そう考えたとき、みんなに社交的であれ!とまでは言わないけれど、
せめて、気持ちのいい挨拶をするくらいのことは心がけて損はない。
ちょっと昭和っぽいことを言うと、先生に「こんにちは」と言われたから、
仕方なく「こんにちは」と返事をするのではなくて、
先生に言われるより先に「こんにちは」と言うのが、より好印象である。
何事も強制すると「○○ハラ」と言われるような時代だが、
挨拶は、しないよりもした方が、絶対に得することが多い。