「はまじ」と「みぎわさん」

僕は、絵を描くのが苦手である。
特に人物画は、実物や写真を見ながら描いたとしても、
本人とは似ても似つかない人になる。
男の顔を描けば「はまじ」になるし、女の顔を描けば「みぎわさん」になる。

見たままに描き写すことすらできないのである。本当にヒドイ絵が完成する。
いや、正確には、完成まで待たなくても描き直したいくらいヒドイ絵なのだが、
描き直したところで、変わらない出来のものになるとわかっているので、
仕方なく勢いだけで完成させるのだ。
立体図形の絵が描けるのは仕事上救いだが、本当に絵心が無いのである。

絵画教室にでも通っていたら、多少はマシだったかもしれない。
小学校や中学校で図工、美術の授業はあったけれど、
その授業だけでは、僕の絵のスキルは磨かれなかった。
(その授業や先生のせいにしているわけではない。)

まず、どこから描き始めていいかわからないのである。
だから最初に輪郭を描いて、全体のバランスを考えてから描き始めるとか、
自分なりには工夫したつもりでやってみるのだけれど、
どうしても「はまじ」と「みぎわさん」になってしまう。
自分でも、その出来が良くないのはわかっているが、
いつも、もうこれでいい!やることはやったんだ!
と、それ以上何かすることを諦めてしまう。

 

先日、ある生徒から「復習ってどうやってやったらいいの?」と聞かれた。
それまでのその子は、「復習してるか?」と聞くと、
いつも「やってるよ!」と答える子だったのだが、
改めて復習の仕方を伝えると、「復習ってそうやってやるんだ!?」
と、誇張ではなく本当に驚きの声をあげた。

要は、僕にとっての絵を描く作業と同じで、
そんなこと説明しなくてもわかるでしょ!とばかりに、
特に誰からもやり方を教わることなく、なんとなく我流でやっていることって、
案外身近に多くあるもんなんじゃないかと思う。
逆の言い方をすれば、正しいやり方を教えてもいないのに、
なんでこんなことができないんだ!?と、思っていないだろうか。

 

「よく読みなさい!書いてあるよ!もう1回読みな!…わかるまで読んで!」

どこの塾でも、どの先生でも、もしかしたらお父さんやお母さんも、
こんな風に言ったことがあるかもしれない。
だが、何回読んでもどこに重要なことが書いてあるかわからない子、
ポイントがどこなのかわからない子は多い(特にこの1年多くなった)。

読めない漢字があるわけではない。ある程度スラスラ読めるのだ。
しかし、内容が頭に入らない。言われた通りに何度も読んだのに、
「もっとちゃんと読みな!」などとダメ出しまでされたりするので、
集中力もヤル気も段々となくなってくる。

 

手取り足取り何でもやってあげるのがいいとは思わない。
だが、全部本人任せにするのも酷だと思う。
少なくとも僕は、「はまじ」と「みぎわさん」にならない方法を教わりたかった。