目指せ甲子園!

全国から優秀な生徒を集めている甲子園常連の野球名門校と、
スポーツ推薦制度の無い公立高校とで、どちらが甲子園に近いか?
と聞かれれば、それは前者で間違いないと思うけれど、
どちらがレギュラーとして試合に出られる可能性が高いか?
と聞かれれば、それは後者の方だと思う。

前者の高校において、
一般入試(勉強)で入ってきた生徒でも、レギュラーを勝ち取れるくらい、
生徒を一から鍛え上げるシステムが整っているなら、それは素晴らしいことだが、
もし、最初(入学前)からある程度の序列が決まっていて、
勝負は、その中で怪我無く生き残れるかどうかだけということなら、
一般入試組が試合に出られる可能性はとても低い。

要するに、スカウトされるくらいの実力を最初から持っていた人なら、
名門校に進むのが、自分の人生にとってベスト(もしくはベター)だけれど、
そこまでではないというのであれば、どちらの道に進むのがいいのか?
その判断は難しい。

 

名門校には、常連であるという経験と自負があるので、
自分たちが一番甲子園に近いとか、自分たちこそ、そこに行くべきだと思っている。
その意識がモチベーションや結束力を生むという事実もあるだろう。
それで、レギュラーや、ベンチ入りをはたせた生徒だけでなく、
(メンバーに一度も選ばれず)スタンドで応援することになった生徒さえもが
いい高校生活だった、いい野球人生だったと思えるのなら、
そこに無関係な外野が口をはさむべきではない。

だけど、その(名門の)学校に入って野球を頑張って、
自分も試合に出ながら、甲子園を目指したい!と夢見ている生徒が、
実のところは、ほとんどノーチャンスなのだとしたら…
それでも、「他の学校よりもウチ(名門校)が最も甲子園に近い!」
「みんなが頑張った先に甲子園があるんだ!」と、
そういう声をかけられ続けていたとしたら、
微かな期待を胸に、きっと頑張り続けてしまうことだろう。

 

頑張りが無駄だなんて思わないし、
名門校で甲子園を目指して汗水垂らした日々は、
もちろん、かけがえのない財産だと思う。
でももし、その裏で、ただただ都合よく扱われている生徒がいたとしたら…。
それまでをも美談にしていいものだろうか。

ウチが一番甲子園に近い。実績が物語っているだろう!
ウチを辞めたら、甲子園には出られない。ウチにいれば…その言葉に乗せられて、
そうしていつの間にか、自分の夢を自分以外の誰かに託すことになる。

「甲子園常連の名門校」と、「甲子園」を
違う言葉に置き換えて読んでもらえたら、何を言いたいかがわかると思う。
クサイ台詞かも知れないけれど、主役は自分以外の誰かじゃない!