しかし、実は音読をすることすら、すでに難しい子もいる。
こういう場合は、お父さんお母さんに『読み聞かせ』をしていただくほかない。
「読み聞かせをしてあげてほしい」とだけ言うと、
そんな!赤ちゃんじゃないんだから!みたいな反応をされることもあるが、
中学や高校の国語の授業を思い出してほしい。
古典の先生はもちろんのこと、現代文の先生もきっと、
授業のときには、読み聞かせをしてくれていたはずだ。
読み聞かせと聞くと、幼少期の絵本のイメージを持つ方は多いが、
実は、高校生になっても読み聞かせをしてもらっていたのだ。
常日頃使用している(母国語の)日本語だからと特別視せず、
国語も語学の1つとして考えれば、何も変なことはない。
英語だとか第二第三外国語の授業では、大学生になってもなお、
先生が読み聞かせをしてくれる時間があったはずだ。
サーパスの授業では、国語の講師が読み聞かせをする機会は多い。
問題を家で解かせてきて、その解答を解説するだけのような授業はしていない。
この授業スタイルは、おそらく他塾と違うところだと思う。だが、
「傍線部3の直前に〇〇〇〇と書いてあるから、問3の答えはイですね。」
と、答えを導くために傍線部付近だけを読むような授業で、
国語力がつくとは思えない。もし、そんな授業を展開したら、
子どももきっと傍線部の近くだけを読むようになってしまうと思う。
また、傍線部付近に手がかりがない問いも多いが、
「4ページの3段落目まで読むと、問4の答えがウであることがわかりますね。」
などと、突然何の脈絡もなく手がかりの場所を言われても、
(答えを言われたら、そう納得するかもしれないが)そこに自分で着目できるか?
となると、流し読みをしていた子では、きっと気づけないと思う。
答えを聞いて、よくわかった気になって帰るだけだと思う。
国語に苦手意識のあった子が、国語を好きになるイメージも持てない。
もちろん、読み聞かせをしても聞いていないという子もいる。
だが、絶対聞いてやるもんか!と思っているわけでもないと思う。
ある日、たまたまそれを聞いたときに、文字だけを目で追っていたときよりも、
はるかに情景が浮かぶようになった経験を持つと、聞ける機会が増えていくと思う。
だから、読み聞かせをする方には、根気や熱意、愛情が必要なのだ。
こっちも忙しいんだから自分で読んでよとか、塾でなんとかしてよ!とか、
ちゃんと聞かないなら読まないよ!という気持ちもわかるのだけれど、
読み聞かせ(音読してあげる)には、
その文章に読み手の体温をプラスする効果があるように思う。
無味乾燥なもの、つまらないものと(子どもが)思ってしまっている文章に、
読み手の熱が加わると、ただの記号でしかなかった文字に、意味を感じられ、
白黒だった情景がカラフルに見えてくるのだと思う。
文字(記号)だけでは情報を読み取れなかった子であっても、
それを音声変換したことで、想像力が働くようになるのである。
親御さんも忙しいに違いないが、
読み聞かせの時間を捻出していただけるとありがたい。