ある卒業生の話である。
この子は、いわゆる天然なところもあるが、
純粋で素直で、そして、聡明な女の子である。
「いい子」という表現では、ありきたりすぎて適切だとは思わないが、
英語で言うなら、まさに「ナイスガイ!」「nice person」である。
友人をむやみに傷つけるようなことは、もちろんしない。
また、自分をしっかり持っているから、不必要に群れることはないが、
一方で、バランス感覚にも優れているので、和は和で大事にする。
むしろ、一人になってしまいそうな人には早くに気づいて、
輪の中に引き入れる、本当に「ナイスガイ!」な子なのだ
さらには(子どものころから)頭の回転が速いので、
こちらが巧妙な皮肉を言うと、ちゃんと気づいて、適切な皮肉で返してくる、
そういう面も持っていた。
しかし、決して無礼なわけではなくて、
「そちらがそういうおつもりなら、こちらもこういう態度でお返ししますわ。」
と、機転の利いた対応のできる面白い子である。
また、その子のご家庭は、聞いている限り、昔からずっと親子関係が良好である。
勉強だけでなく、価値観も含めて、何かを押し付けられたという話を聞かない。
中学受験をするかどうかも、志望校も、日々の勉強についても、
全部、本人の意思に任せられていたのではないかと思う。
しかし、彼女から発せられる言葉の端々に、
ご両親への信頼と尊敬の気持ちを感じられたから、
おそらく、相談はしていたのではないかと思う。
さて、その子は今や大学生となり、だいぶ大人になったが、
先日、その子の家でのやり取りを聞いて笑ってしまった。
どういった話の流れで聞いたのかは失念してしまったが、
まだ、ご両親から何かお小言を言われたりするか?という話だったように思う。
それで、そのときの彼女の(親に対して言った)言葉が、
「老後の面倒を見るかどうかは、ここからのあなたたちの態度次第だからね!」
だったそうである。もちろん、冗談半分の口調だったのだろうと思うが、
両親とこんな軽妙なやり取りができるのは、なんとも面白い。
彼女の性格や親子関係なら、そんなことを言いながらも、
きっと老後のサポートもしっかりやるのだろうと思う。
むしろ、まだ大学生の、二十歳やそこらで、
もう親の老後のことを考えているのが、たいしたものだと思う。
(考えていなければ、そんな冗談を当意即妙に言えないはずである。)
僕らの記憶の中では、ついこの間まで小学生だった子なのだが、
「老後の面倒を見るかどうかは、ここからのあなたたちの態度次第だからね!」
とは、なかなか痛いところをついてくる。