塾の先生という仕事は、傍目(はため)には、頭脳労働であると思われがちだが、
実際は、結構な割合で肉体労働でもある。
受験期直前などは、もう体力勝負なところがあるし、そうでなくても、
受験生の授業を担当した後と、4年生の授業を担当した後では、
疲れる部位が違う。脳だけが疲れるか、身体の方が疲れるかの違い
と言った方が伝わるかもしれない。
ところで、比較的最近になって、頭脳労働、肉体労働に加えて、
新たに「感情労働」という考え方ができている。
「感情労働」とは、簡単に言えば、自分の感情をコントロールしながら、
相手にポジティブな働きかけをする労働という定義のようであるが、
ここで、塾の先生という仕事を、
社会学者の宮台真司さんの言葉を(多少)お借りして考察してみると、
「子どもに勉強を教えるだけが塾の存在価値なのではなくて、今や、
塾では子どもに居場所感を与えることが重要になっている。
感情面でのケアが大切であるという意味で、塾の仕事は感情労働になりつつある。」
ということになる。
この社会学的な分類の仕方が正しいかどうかはさておき、
塾の役割として、子どもに居場所感を与えるとか、感情面でのケアが大切であるとか、
そういう分析に関しては、確信を持って間違いないと言える。
少なくとも、サーパスはそれを大切にしている。
講義をして終わりではなくて、質問も受け付ける。相談も聞く。愚痴も聞く。
それは勉強についてのことに限らないし、塾だけでのことにも限定しない。
勉強以外のその子の良さ、個性についても、大切にする。
また、小学生時、つまり塾在籍時にだけ、それを可能にしているのではなくて、
受験を終えて塾を卒業した後も、そうでありたいと考えている。
いつでも帰って来られる場所でありたいと思っている。
さらに付け加えておくと、中学受験というものは、高校受験や大学受験よりも
親御さんの関わる度合いが高いため、その結果のみならず、途中過程でも、
子どもは親御さんの影響を受けやすい。
これはすなわち、(特に)お母さんの気持ちが安定していなければ、
子どもの学力がすんなり伸びていかない可能性が出てくるということである。
だから、子どもだけをケアしておけば事足りるというわけではない。
極端に言えば、親御さんにとっても、帰ってこられる場所でありたい。
蛇足となるが、サーパスでは、年に3、4回の父母会と、
同じく年に3、4回の面談の機会を設けている。
もちろん、特に相談することがなく、必要無し!と御家庭が判断される場合は
見送っていただいても構わないわけだが、6年生にもなると、
予定している正規の面談以外にも、面談を希望されるケースが増える。
電話相談やメール相談、あるいは送迎時の立ち話面談も含めると、
かなり頻繁に塾と御家庭とでコミュニケーションを取ることになる。
親御さんの感情面までもケアができているなどとは思っていないけれども、
通っている生徒だけでなく、ご家族もひっくるめて、もはや
赤の他人ではないと(勝手に)思っている。
ご縁があったことを大切にしたい。