大手塾と個人塾の違いについて、成績が伸び悩んだ場合に「相談」できるかどうか、
という視点で書いてきた。
ここでは、どちらが優れているか!という話をしたいわけではない。
大手には大手の良さがあり(過去ブログ、サピックス、日能研、四谷大塚のいいところ参照)、
どちらがそのご家庭のタイプに合っているかだけの話だと思う。
さて、今日はまた別の角度から。
受験科目が国算社理の4科目だとして、そのうちのどれか1科目だけを教えている先生が、
(ある生徒のある学校への)合格の可能性を判断できるかといえば、かなり難しい。
自分の担当科目については、(その子が)どのくらいの力があるか把握できていても、
他3科目の情報を持っていなければ、(自分の担当科目がどんなによくできても)
合格できるかどうかはわかるはずがない。
だから、良いとか悪いとかではなくて、各科目の先生は、他の科目のことなど考えずに、
自分の科目で点数を取らせられるように、せめて自分の科目が足を引っ張らないように、
ということを考えて指導することが多いように思う。
だが、個人塾の先生は、それだけでは務まらない(と保護者から思われる)。
少なくとも、個人塾の責任者なら、在籍している生徒の
4科目トータルでの得点力や地力、志望校や受験スケジュール、
あるいは、各科目の課題をどこまでやれているか、余力や疲れ具合・・・
といったところまでを把握しておかなければ、進路面談ができない。
ここも大きな塾との違いである。
大きな塾での進路面談は、ほぼ間違いなく、模試などのテスト結果を見ながら、
偏差値が届いているか、合格の可能性何%と出ているかをもとにおこなわれると思う。
だが、この程度のことなら、返却されたデータを見れば、素人でもできる。
素人でもできると書いたが、実際の話、
大きな塾なら、校舎長や科目の先生ではない人に進路相談をすることがある。
しかし、その人たちの立場や権限で、志望校に反対することなどできるはずもないから、
基本的には「頑張れば可能性はある」「まだまだこれから」というような面談になる。
良く言えば、背中を押してもらう面談といえると思う。
それに対して、個人塾での面談は、ある種、嫌われることを覚悟の面談になる。
合格する可能性が低いと考えられる場合には、それをきちんとお伝えすることが、
自分たちの、プロとしての誠意であり責任であると考える。
「受ければ可能性はある。受けなければ可能性はない」などと、
宝くじでも買うような無責任なことを言うわけにはいかない。
ところで、近頃は本当に難しい時代である。3段落目で書いたように、
個人塾の先生は一人ひとりのことをトータルで見ているので、
場合によっては、『今のままいったら合格できない』ということがわかってしまう。
自分の担当科目のことしか考えなかったら、そのまずい事態に気づかずに済むのだが、
他科目の先生と授業中の様子や小テストの結果など(の情報)を共有したり、
課題の量を相談し合ったりもするので、合格の可能性を予測できてしまうのだ。
しかし、それを「今のままじゃ受からないぞ!」とストレートに口にすると、
もしかしたら大クレームが来るかもしれない時代である。
「先生から受からないって言われて、子どもがヤル気を失いました」
「可能性はあるぞ!頑張れ!と言ってくれていたら、前向きに頑張れたのに…」
と、言われかねない。
個人塾だからこそ、(プロの目から見て)「このままではマズイ」と判断できたのに、
それを伝えないでおいたら、何のプロなのだろう?
ここから頑張っても受からないと言っているわけではなくて、
修正、改善すれば受かる可能性があるのだから、プラスに受け取ってほしいと思う。
