私立の中高一貫校では、カリキュラムの前倒しをしている。
もちろん、進学校と大学附属校で違いはあるだろうけれど、
理系に必要な『数ⅢC』をいつ教わるかは、そのわかりやすい一例だと思う。
公立高校では、『数ⅢC』を高校3年で学ぶのが普通なのに対して、
授業のペースがはやい中高一貫校なら、それを高校2年で学習し終えている。
つまり、中高一貫校では、高校最後の一年間については、
新しいことを学ぶのではなく、問題演習の時間に充てていくのである。
大学共通テストがおこなわれるのは1月なので、
もし、『数ⅢC』を学び終えるのが、高校3年の終わりに近い時期であれば、
ほとんど実践練習を積む時間がない。
同じように、歴史の授業で『近代史』を学習し終わるのが、その時期であれば、
最もテストに出ると言っても過言ではない時代を、
一通り教わっただけの状態で試験に臨まなくてはいけなくなる。
と、こういう風に書くと、圧倒的に私立が有利という印象を持たれるかもしれない。
しかし、例えば、高校2年の最後まで、あるいは3年の途中まで
部活一筋のようなタイプには、これはこれで、なかなかしんどい。
部活に打ち込んでいる最中、授業がどんどん進んでいき、
いざ受験勉強を始めようと思ったときには、カリキュラムがすでに終わっていて、
問題演習の時間になっているからである。
もちろん、だからと言って、公立が有利になるわけではないが、
人によって、ヤル気になる時期には違いがあるし、描く成長曲線は違っている。
だから、カリキュラムが前倒しになっていれば、それだけで良いわけではなくて、
それをプラスに持っていけるかどうかは、個人個人のタイプによるのである。
ところで、中学受験塾の中で、カリキュラムの進め方が圧倒的にはやい塾は
サピックスと四谷大塚、そして早稲アカである。
元々、四谷はカリキュラムをこんなに早く進める塾ではなかったが、
ある年、突然、カリキュラムを一気に早めた。
想像するに、都内の最難関校の合格実績で、サピに対抗するために、
カリキュラムを(サピと同等まで)早めたのではないかと思う。
すなわち、5年生までの間に受験に必要なほとんどを教わっておいて、
受験学年になったら、ひたすら実践練習を積んだ方がいい!
と考える層が、最難関校狙いの人の中には結構な数いることに着目し、
その層が、中学受験の塾選びをする際に、サピ一択!とならないよう、
カリキュラムを早めたのではないか!と、こういうことである。
この前倒しカリキュラムが、どういう層をターゲットにして作られたものか。
しかし、カリキュラムは、誰にとっても早ければ早いほど良いというわけではない。
都内の最難関校(あるいは同レベルの学校)を目指す子の中にだって、
ゆっくり理解していくことで伸びるタイプがいるはずだ。
くどくどとしつこいが、手際よく処理していくことだけが受験勉強ではない。
いや、そもそも理解の伴っていない処理なんてものは、勉強ではない。