水谷隼選手

昨日、今回のオリンピックから採用された卓球混合ダブルス決勝で、
水谷隼・伊藤美誠ペアが中国ペアを破って優勝した。
以下は、卓球素人スナフキンの主観による考察である。

 

卓球の世界において、中国の存在はあまりにも大きい。
トーナメント戦の序盤であっても、中国選手とあたることがわかれば、
その選手のランキング(順位)が何位であろうと、ここで負けるかな?
と思わされてしまうような、巨大な壁である。

ただでさえ圧倒的な存在感を漂わせる中国人選手であるが、
今回決勝で戦った相手は、過去4戦して一度も勝ったことのない相手である。
試合が始まって、瞬く間に2ゲームを連取された時には、
このまま見せ場もなく、ストレートで負ける可能性もあるなと思わされた。

伊藤選手のミスが目立っていた。
準決勝の時には、「やりたい放題。何でも入る気がした。」
と調子の良さを笑顔でアピールしていたのに、
中国相手に、戦う前から、どこか萎縮してしまっているかのように見えた。

 

ところで、オリンピックが始まる前、水谷選手は伊藤選手のことを
「日本人の中で、唯一、中国人選手と対等に渡り合える選手」と評していた。
それだけ評価しているからこそ、この決勝で中国ペアに勝つには、
伊藤選手の復調が必要だと、この時、水谷選手は考えていたのではないだろうか。

連取された2ゲームも、次の3ゲーム目も、
水谷選手からは、伊藤選手が復調するまで自分が粘って持ちこたえてみせる!
という決意が感じられた。
テレビでは、本人たちの声は聞き取れなかったが、
この間、水谷選手はずっと伊藤選手を
「大丈夫」「落ち着いて」「(ボールを)よく見て」
と励まし続けていたのだという。

そして、そこからは皆さんご存知の通り、伊藤選手が本来の姿を取り戻した。
卓球を楽しみながら、初めて中国を倒して金メダルを手にしたのである。

 

若さは武器でもあり、脆さ(もろさ)でもある。その時の気分で、
実力以上のものを出せることもあれば、実力の半分も出せないこともある。
決勝での伊藤選手は、どん底の状態から始まったが、
最終的には、乗せたら手のつけられない『大魔王』状態への大変貌だった。

思えば、準々決勝のドイツ戦も大逆転勝利だったが、
水谷選手は、簡単に勝負を諦めないし、(自分たちの流れになるまで)
焦ることなく、イライラすることもなく我慢する。
そして、パートナーの伊藤選手の力を信じて、
時に引っ張り、時に後ろから支える、そういう選手である。

世界ランキングで見れば、伊藤選手の方が実力は上かもしれないし、
ペアの片方が伊藤選手でなければ、優勝はできなかったかもしれない。
しかし、やはり、ペアのもう片方が水谷選手だったからこそ、
伊藤選手が力を発揮できて、優勝できたのだとも思う。