塾の先生を始めて何年か経った時の話。
当時勤めていた塾は校舎がいくつもあったが、
その年、今まで行ったことのない校舎にも週1回だけ授業をしに行くことになった。
同じ塾ではあっても、校舎ごとにカラーがあったり、
校舎長の指導方針のこだわりがあったりするものだから、
最初に自分のやるべき仕事と立ち位置をはっきりさせたくて、
僕に望んでいることをその校舎の校舎長にたずねてみた。
そうしたら
「スナフキンがいいと思ったことを思う存分やってくれたら、それでいい。」
シンプルすぎる答えが返ってきた。
「僕がいいと思うことをやった結果、この校舎の今までの歴史や、
校舎長の意図に沿わないことをやってしまうかもしれませんよ?」
と恐る恐る聞き返すと、
「スナフキンがいいと思ったことのアラを探せば見つかるかもしれないけれど、
アラ探しに終始して何も進まないよりは、
いいと思ったことを思う存分やってもらった方がよっぽどいい。
ミスがあっても、それは俺がフォローするから気にしないでいい。」
笑いながらそう答えてくれた。
若いうちはとにかく、無我夢中に突っ走れ!ということだったのだと思う。
難しく考えるな!
先を読むな!
余計なことを考えている暇があったら、まず行動を起こせ!
たくさん失敗しろ!
きっと自分の知らないところでたくさん迷惑をかけていたのだろうと思うが、
この校舎長からは褒められた記憶しかない。
褒められて褒められて、ずっとヤル気に満ちあふれていた。
あれから何年も経ち、あの時の校舎長の年齢にだいぶ近づいたが、
今でも「あの校舎長はかっこよかったな。自分はまだまだかなわないな。」
と、つくづく思う。