今、中学受験塾の中で最大規模を誇っているのはサピックスであるが、
かつては、日能研もその位置にいた。
特に神奈川県内では抜群に強かったイメージがある。
当時は、あの「Nバッグ」を背負っているだけで、周りを委縮させる効果があった。
さて、その日能研はどんな塾であるか。
家庭教師として、サピ、日能研、四谷、早稲アカ、市進、そして地域の個人塾…
と、教えてきた経験(だいぶ過去の話になってしまうのが難点だが)で言うと、
日能研の良さは、余白の多さと自由度にあると思う。
例えば、授業で扱うテキストの他に、類似問題の載ったテキストが大量にある。
これらが一応、宿題、自主課題というような位置付けなのだが、
提出を義務付けられてもいないし、やらなかったところで何も言われない。
週末のテストで結果さえ出していれば、クラスが下がることもない。
やるもやらないも自由。
そもそも中学受験というもの自体が、やるもやらないも自由なのだから、
強制はしない。ヤル気さえあれば、基本から応用、発展まで問題は揃っている。
まさに「ザ・中学受験塾」という感じがしないだろうか。
ただ、残念ながら、昭和の感じなのかな。
今の時代は、高いお金を払って、やるもやらないも自由では困る!
「ぬるい!」ということになるのだろう。
だが、その「ぬるい!」と言われる部分こそが、日能研の良さなんじゃないか
と、僕は勝手に思っている。
宿題が強制されていないから、習い事も併用できる。
算数が得意なら算数はほどほどにして、社会に多く時間を割くこともできるし、
あるいは、好きな算数にとことんのめり込むこともできる。
とはいえ、自宅学習が本人のヤル気(あるいは家庭力)に委ねられてしまうと、
結果は自己責任と言われているような、そういう印象が強くなる。
だから、日能研はドンピシャで合うタイプと、あまり合わないタイプが、
はっきり分かれるのではないかと思う。
余談であるが、家庭教師としては、日能研はサポートしやすい塾であった。
やることを義務付けられていない、大量のレベル別の家庭学習用教材があるので、
教材の準備を(こちらで)ほとんどしなくていいという面でも楽であった。
だが、他の大手塾と比べると、(少なくとも当時は)解答の解説が親切ではないので、
一般のお母さんお父さんでは、サポートしにくいのではないかと思う。
授業で吸収できる割合が高く、自己管理のできるタイプ、
かつ、自分の時間を奪われたくはないというタイプに、
日能研は合っているのではないかと思う。