今年の甲子園は優勝候補と言われる甲子園常連校が、
早い段階で次々と消えていった。
甲子園ファンの中には、いわゆる名門校に順当に勝ち残ってもらって、
準決勝あたりからはその名門校同士の勝負を見たいと思っている人も多いだろう。
今年準決勝まで残った4校は、そういう意味では
それぞれ意外な学校だったかもしれない。
しかし、優勝した前橋育英はピッチャーだけでなく、
ショートやセカンドを始めとした固い守りが際立っていたし、
準優勝の延岡学園は、この猛暑の中で連戦を勝ち抜くために
3人のピッチャーを揃えていたのが強みだったと思う。
前橋育英の試合は常に「いい試合」だった。
心底どうでもいいプチ自慢をするなら(笑)、
一回戦を見た時点で今年の優勝校は前橋育英!と予想していたくらいである。
決勝戦は(講習中で)リアルタイムでは見られなかったが、
そんな僕のような人のために『熱闘甲子園』がある(笑)。
そこで解説の工藤さんも、この試合が
いかに素晴らしい試合だったかを述べられていたが、
最近になって氏原英明さんが、決勝に残った2校の何が良かったのかを
記事にされていたので、今日はそれを紹介したいと思う。
前橋育英は「凡事徹底」という言葉を掲げ、小さなことを積み重ねて
強くなってきたチームだった。全力疾走やカバーリング。
日常生活においては、挨拶や時間厳守、掃除を重んじ、人間性を高めてきた。
荒井直樹監督は言う。
「野球以外の面で重視しているのは、服装と時間、清掃などです。
服装が乱れたら、社会では生きていけません。
時間はただ、集合時間に間に合えばいいということではなく、
提出物をきっちり守るとか、『間に合う』ということが大切。
掃除については、片づける人間か片づけられない人間なのかどうか。
野球の試合の中には、『試合を片づける』という部分がありますし、
そこにつなげて話をします」
一方の延岡学園も、日々の積み重ねを重視するチームだった。
野球の練習だけではなく、日常生活・学校生活で自身を律する。
挨拶やゴミ拾いなどの当たり前のことを当たり前に繰り返してきた。
重本浩司監督は言う。
「うちの学校は大峡町というところにあるのですが、
甲子園の出場が決まった時に、町の方から
今年は甲子園に行くんじゃないかと思った、と言われました。
挨拶や普段の行動を見て、今年は違うと思ってくれたそうです。
僕は、勝ったことよりも、そう言ってもらえたことが嬉しかった。
今年の3年生は普段の生活にしても、寮生活にしても、コツコツと積み重ねてきた。
人の良さ、人間性はあると思います」
両者は似通っていた。(中略)
荒井監督は言う。
「疲れていることと、気付くことは切り離して考えています。
楠(裕貴)が今大会の試合で、チャンスにキャッチャーフライを打ったんですけど、
その時にマスクを拾ってキャッチャーに渡してから
ベンチに帰って来たことがありました。
楠は今大会打てなくて迷惑を掛けたって言っていたんですけど、
僕は楠のその行為がすごく大事なことだよって話しました。
凡打して悔しいと思うけど、その瞬間に次の事が始まっているわけですから、
次に切り替えられるんです」
大事な試合で結果を出せなかった楠君に、ヒットを打つとか試合に勝つとかよりも
大事なことがちゃんとできてるじゃないか!と言えるこの指導が、
とても清々しいと僕は思います。
参考Number web「甲子園の風」より