2008年からドイツのヴォルフスブルクというチームに在籍している長谷部選手は、
今年の夏にイングランドへの移籍を求めたせいで、
開幕以来、出場機会どころかベンチ入りメンバーにさえ一度も入れなかった。
ヴォルフスブルクの監督であったマガトは、規律に厳しいことで有名である。
そしてまた、チームの編成に携わるマネージャーも兼ねている。
そのため、マガト監督のもとで移籍を求めたことで、
チームを離れたがった選手としてレギュラーから外されることとなった。
しかし長谷部は、所属するクラブでの試合にさえ出られないのに、
現日本代表監督ザッケローニからの信頼は厚く、
日本代表のキャプテンを任され続けている。
10月におこなわれたフランス戦では、長谷部の試合勘を疑問視する声
(実戦から離れすぎていて、リズムに乗れていないのではないか)
がたくさん上がったが、続くブラジル戦でも変わらずスタメンで起用された。
このことからもザッケローニが長谷部を
チームの精神的な柱として考えているのは明らかだと思う。
一体、長谷部の何がそこまで信頼に足るのか。
昨日のテレビでザッケローニ監督がこんなことを言っていた。
「レギュラーから外されると一生懸命やらなくなる選手はよくいる。
しかし長谷部は反対だった。
むしろこれまで以上にクラブでハードな練習をしていた。」
長谷部が試合に出してもらえない間、
ヴォルフスブルクは勝てない試合が続き、遂にマガト監督は解任となった。
後任がケストナーになってから、
長谷部は早速試合に先発出場しアシストを決めた。
長谷部が試合に出られたのは、
ケストナーが「しっかり練習をやっているのを見て」いてくれたからであり、
またチームメイトが「勝つためには長谷部が必要だ。」と
監督に言ってくれたからだという。
一方、試合勘を疑問視する声が上がっていたことは
長谷部自身も知っていたそうだ。
しかし彼はそこへの不安はなかったと言う。
「不安を持って試合に臨むことほど危険なものはない。
試合に出るときは自信を持って。
自信と、自信に伴う勇気。」
自信を持ってやるためには、それまで積み上げてきたものがモノを言うと
僕は思っている。
何も積み上げずに自信を持つことができるとしたら、
それは勘違いか過信でしかないと思う。
試合に出られなくてもハードな練習を続けたからこそ、
いざ試合に出た時のポジティブな自信につながったのだろう。
ただ、彼が最後に添えた「勇気」という言葉。
これが実はキーワードなのではないかと僕は思う。
どんなに練習を積んだとしても、弱気になってしまう瞬間はきっとある。
しかし、そこで勇気を持ってやること。チャレンジすること。
それが必要なのだと思う。
長谷部選手は今シーズン、試合に出られない日が続いたにも関わらず、
解任されたマガト監督に対しても感謝していた。
「ただ何を言っても、約五年前に日本代表選手でなかった当時の僕を
ドイツに連れて来てくれたのはマガトさんですから。
感謝ですね。
これからのマガトさんの活躍を僕も願っています。」
こんな男だからこそ、信頼されるのだろう。