図形の問題では、どこに補助線を引くか、あるいは、
あらかじめ問題に描かれた図から、どの線を消去するか、
これがわかれば、そこからは計算力でどうにかできることが多い。
だが、これが難しい。ある程度のセオリーはあるが、例外もあるし、
セオリー通りに解くよりも、一見、意外だと思うようなところに補助線を引くと、
あっという間に解けることもある。
平たく言うと、「慣れ」が必要なのだが、
この「慣れ」は、演習量を増やせば身に着くというものでもない。
ここについては、子どもよりも、多くの大人が勘違いをしているところだ。
(演習)量が必要ないと言っているわけではない。
だが、ただ闇雲に問題を解いていても、できるようにはならない。
漢字をイヤイヤ10回書いているとき、あるいは、
おぼえることが目的ではなく10回書くことが目的になっているとき、
量だけこなしても、漢字をおぼえることができないのは、なんとなくわかると思う。
それと同様に、図形の問題も、演習量を増やせば、
それだけでできるようになるというわけではない。
おそらく皆さま経験があるであろうたとえ話をすると、
迷路(のゲーム)で遊ぶときは、スタートからゴールを目指すのが普通であるが、
ちょっと行き詰まったときに、ゴールからさかのぼってみないだろうか?
この経験がある人になら伝わると思う。
要は図形の問題も、ここの角度がわかっていたら解けそう!とか、
ここの長さがわかれば何とかできそう!という、
(結論に近いところから)さかのぼる発想が必要なのだ。
スタートとゴールの両方から攻めていく感覚が身に着くと、
問題への見え方が変わると思う。
そしてもう1つ肝心なことは、
図形の問題は、教わっただけでは、できるようにならないということである。
もっと言えば、教わってもできるようにならない。
自分で色々試して、失敗した経験がものをいう。
正解にたどり着ける方法を、楽して手に入れようとするタイプ、
すなわち手も動かさず、補助線を引いてみたりもせず、
正しい補助線の引き方を先生が言うまで待っているタイプが、
図形を得意にできる可能性は低い。
こういうタイプは、ドリルのように類題が並んでいる場合は解けるが、
そうでない問題になると、途端にお手上げになってしまう。
似たような問題を解き続けていれば、やがてできるようになるという考えは、
全く見当違いとまでは言わないが、モノによるし、人にもよる。
似たような問題を解き続けるのは、頭を使っているようで、
実は無思考の可能性もある。
パターン学習にはまってしまうと、抜け出すのにも時間がかかる。