両側から見る

神奈川県の最低賃金(時給)が、昨年の10月から983円に値上がりした。
ちなみに10年前の2009年は、789円だった。
働く立場からしたら、賃金が安いより高い方がいいから、
この約200円のアップは、ありがたいことに違いない。
(親の世代が学生の頃にやっていたアルバイトの時給と比べたら、
300円くらい高くなっているかもしれない。)

だが、これで人々の生活が良くなるか?というと、そんなこともない。
雇う側の立場になって考えたらわかる。以下の例でどうだろう。
最低賃金が800円なら5人雇えるのに、最低賃金が1000円なら4人しか雇えない。
職に就けた人の生活は少し良くなるかもしれないが、
職に就けない人が増える可能性があるのである。

このように、ものごとには一方の側からだけ見るのではなく、
逆側の立場になって考えることで、見えてくるものがある。

 

「来年度は入試問題を易しくする」と聞くと、喜ぶ人が多いかもしれないが、
問題が解きやすくなるとわかれば、受験する生徒数が増えて倍率が上がる。
平均点も上がって、合格点も上がる。ミスの許されない勝負になる。
また、易しくした度合いにもよるが、易しくし過ぎれば、
難問に対して、じっくり取り組むのが好きというような優秀な子が、
易しい問題を取りこぼして不合格になることもある。

少なくとも、その年に入学する生徒は、昨年までの生徒とは層が違う。
となると、学校は昨年までとは違う授業を展開しなくてはならない(はずである)。
授業の難易度やスピードだけでなく、
目の配り方、声のかけ方、諸々変わってくるはずである。
ついつい、今までこのやり方でやってきたから…となりがちなところを、
いちいち変えていかなくてはならないはずである。

仮に、大学合格実績が魅力的な学校だったとしても、
易しくなった入試問題で入学してきた生徒が、
易しくする前の入試問題で入学してきた生徒の結果とイコールになるには、
学校側に、その準備と柔軟な対応力がないといけないと思う。

 

しかし、受験する人数が少なかった時代には、とても親切な対応の学校だったのに、
人気が上がると、そうではなくなることもある。
問題が易しくなるのは、いいことばかりではない。