「偏差値いくつ?」
大きな塾に通っている子は特に、低学年でもこんな会話をしている。
もちろん、大きな塾にだって、こういう話をしない(したくない)子もいるのだが、
常に他者との比較を迫られていると、この質問をしないではいられない子が出てくる。
同じ塾に通っている子同士で(この会話を)することもあるようだが、
他塾に通っている子にも質問して、その子のレベルや、他塾のレベルを測ろうとか、
あるいは、自分の塾での所属クラスや、模試の偏差値などをちょっと自慢したくて、
こういう会話(質問)をするのだろうと思う。
僕は、中学受験塾に勤めていながら、小学生、特に小学校低学年の子が、
人に偏差値を聞いたり、自分の偏差値を公表したりしている姿に危うさを感じてしまう。
サーパスにも、「何点だった?」なんて会話を、テスト後にしている子はいる。
だから、他塾のことだけをとやかく言えるわけではない。
サーパスにも、他の人のことを気にしたり、点数を自慢したくなったりする子はいる。
だが、得点と偏差値は違う。
得点は人に左右されないが、偏差値は他との比較のもとに算出される数値である。
小学生の低学年から、この数値でもって人と比較され続けるのは危ういと思うのだ。
子どもが、褒められたい、認められたいと思うのは普通だと思うので、
点数が良かったときに、鼻の穴膨らませて、
抑えきれないニヤニヤがこぼれているくらいは可愛いと思う。
だが、点数や偏差値で、人に対してマウント取りたいとか、
自分よりできていない人を見つけて安心したいとか、
そういう感情になっているとしたら、これは明らかに良くない方向に進んでいると思う。
「偏差値いくつ?」も、最初はただの無邪気な質問だったのかもしれない。
しかし、(冒頭で書いたように)低学年からずっと順位や偏差値で評価され続けていると、
頭や心が、段々とおかしくなっていくことは想像に難くない。
大人だって、例えば営業成績でもって、
常に人と比較され、それをもとに評価され、数値が下がったときに罵倒されていると、
成績が上がった時に一瞬はホッとできても、今度また下がったときのことを想像して、
不安になるんじゃないかと思う。
それでも受験は、結局のところ他人に勝たなくてはいけない競争じゃないか!
と、こうお考えの方もいると思う。
まぁ、色んな考え方があると思うけれど、個人的には、
それでも、偏差値で小学生を評価するのだけはやめておかれた方が・・・と思う。
公文やそろばん、英検や漢検の級ならいい。
上がるだけで下がることはないし、どこで受けても基準がおそらく変わらないから。
スイミングなどは、通っているスクールで違いがあるだろうけれど、これもいい。
だが、偏差値は相対評価だから、頑張っても下がることはあるし、
頑張らなくても上がることがある。
同じ数値でキープしたくても、自分の力だけではどうにもできない。
4年生のときの偏差値が、その子のピークだったということも十分にあり得る。
鼻高々に自慢していたことを、恥ずかしく思い、後悔することになるかもしれない。
とにかく、この数値の大小で、小学生が人のことを評価してしまうようになるのは、
とても危なっかしいと思う。
「あの子は、模試の偏差値が70なんだって!すごいね!」と褒めるような内容でも、
それを言ってしまっては、すごくない(と思っている)子もいると、
暗に示していることになるわけで。
しかし当然、子ども(小学生)が悪いわけではない。
その評価システムを小学生に使わなければいいだけだと思うのだ。
