その昔、「サーパスは(ウチの子を)全く褒めない」
と言って退塾してしまった方がいらっしゃった。
在籍期間は特別短かったが、その短い期間でも、
実際は、全く褒めなかったというわけではない。
この私でさえ数回褒めたことがあるので、
他の先生の(その子を)褒めた回数はもっと多くあったに違いない。
だが、その子が褒められたことを親に報告していなかったか、
あるいは、親が期待するほど多くなかったかのどちらかだったのだろう。
お母様は非常に不服そうであった。
一方で、あるとき、ある生徒をサラッと褒めたことがあったのだが、
その子からは「褒めないで!褒められると油断しちゃう!」と言われた。
近頃は、『褒めて伸ばす』指導がもてはやされているが、
褒めるにしても、なかなか難しいのである。
ちなみに、私でさえと書いたのは、私が生徒のことを褒めない
と、生徒や保護者から思われている(と聞いている)からなのだが(苦笑)、
そんな私でも、家庭教師をしていたときは生徒をひたすら褒め続けていた。
要は、集団授業か個別指導かでも対応の仕方を変えるという、まぁそういうことである。
(もちろん、他にも様々理由はある。)
集団授業で生徒を褒めることの難しさの例としては、
例えば、30点満点の漢字テストで、いつもは10点も取れない子が
もし20点台を取ったら、メチャクチャ褒めてあげたい!
と、その子の頑張りを見た先生なら思うだろう。
しかし、その子をみんなの前で褒めることにはリスクもある。
いつもいつも20点前後の子は、えてしてあまり褒められない。
あとちょっとの丁寧さや、注意力があれば満点取れるのに…と、
むしろ少々厳しめの要求をされることの方がきっと多い。
その子からしたら、自分の方が平均的に点数を取れているのに、
ちょっと頑張ったぐらいの子が褒められるなんて…と、納得がいかなくてもおかしくない。
「あの子だけズルい」「贔屓されてる!」と思うかもしれない。
成績がオールAに近いような子であれば、
多少は精神的にも成長しているだろうから、おそらく先生の意図も汲んで、
そこに不満を感じたりはしないかもしれないけれど、
何かしらのストレスを抱えたりしているときだったら、
とげとげしい気持ちになってしまうこともあるかもしれない。
みんなの前では褒めずに、テスト用紙に褒めるコメントを書き残せば…
という方法もないことはないが、その個人的に書いたコメントを
他の子が偶然目にした場合には、もっとややこしいことになることもある。
「ウチの子は褒められたら伸びるタイプなんです」「褒めてあげてください!」
と、面談等で言われることは数多い。親御さんの気持ちや意図は十分にわかる。
私(親)が言うより先生に言われた方が…というのも、その効果もわかっている。
別に、意地になって褒めないわけじゃない。褒めるのは気が進まないなんてこともない。
ただ、褒めて伸びるその伸びよりも、もっと伸びてほしいと思うからこそのこともある。
色々、考えた末、褒めないこともあるのだ。
そういえば、今年の卒業生が家でお母さんとこんな会話をしていたと聞いた。
お母さん「スナフキンに褒められることあるの?」
卒業生「たまに。」「いいねぇ!くらい」
お母さん「それだけ?」
卒業生「スナフキンのいいねぇ!は最大級の褒め言葉だから!」