私立の中高一貫校の多くは、文化祭のようなイベントの際には、
生徒が主体となって、その準備をする。
先生がイニシアチブ(主導権)を取って、
展示の内容を決めたり、出し物を決めたりすることは少ない。
学校によっては、先生が口出しアドバイスをすることもあるようだが、
例えば、僕の通っていた学校では、
ほぼ100%、先生が口を出す場面が無かった。
それこそ飲食店なら、衛生、品質のこと、そして売り上げ(お金)のことなど、
ある程度、大人が把握しておいた方が安心なこともあると思うけれど、
それら全てを、生徒に任せてくれていた。
お金が無くなったり、収支が合わなかったりすれば、
もちろん問題になるのだけれど、その問題解決に対しても、
先生が前面に出ることなく、生徒による解決を見守ってくれていた。
生徒自身によって問題を解決できないようなら、
あるいは、お金の盗難事件が起きたりするなら、
大人に管理される文化祭になるか、文化祭自体を廃止にするか、
と、そういう話になってしまうことが想像できるため、
生徒も、自分たちの大切なものを守るために、一生懸命やるわけなのだ。
その文化祭を取りまとめるのは、多くの私立において、
高校2年生である(高校3年生は、受験勉強に勤しんでいる(はず)。)が、
では、高校2年生になった途端に、何の経験もなく、
文化祭を段取りから全て取り仕切れるようになるかといえば、そんなわけはない。
高校1年生のときには、1コ上の先輩の姿を見て、
来年の自分がどうあるべきかを考えているし、
中学3年生のときには、年下の2学年をどう指導するかを試行錯誤している。
中学1年生の時点ですでに、4年後には自分が文化祭を仕切れるようになりたい!
と思っている人もいるかもしれない。
要は、私立の文化祭(に限ったことではないが)は、
毎年毎年、ブツ切りでおこなわれる、ただのお祭りなのではなくて、
その学校に脈々と受け継がれる、まさに文化なのである。
それ自体が、その学校における学びでもあるのだ。
ところが、この2年、コロナの影響で満足な文化祭ができていない。
文化祭を中止にした学校もあれば、
実行できたとしても、飲食店は無しだとか、オンラインだとか、
そういう学校が多い。
もし、今年もそうなってしまうと、文化を後輩に伝えられる人が、
いよいよいなくなる。今年開催できれば、
(コロナ前に)文化祭を実施した当時、中学2年生だった生徒が、
現高校2年生として、多少は、後輩に文化を伝えることができる。
しかし、今年も実施できないとなると、当時の中学1年生、
まだ右も左もわからなかった子たちが、その役目を負うことになる。
それは、難しい気がする。ここで文化が途絶えてしまうかもしれないのである。
もちろん、コロナはコロナで心配である。
文化祭を人命と天秤にかけることなどできない。
だが、文化を途絶えさせるということも、これはこれで大きな問題である。
6年間通える中高一貫校でさえそうなのだ。
まして、3年しか通えない学校、4年しか通えない大学では…
考えなければならない問題である。