「夏目と右腕」という番組は、各界のリーダーその人ではなく、
そのリーダーを支える右腕の証言を通して
リーダーの人物像を明らかにしていくという、一風変わった番組だ。
4月末、この日は棋士の羽生善治さんの練習相手を務める
長岡裕也五段が、羽生さんの右腕として登場した。
長岡さんと羽生さんとの年齢差は15歳。
羽生さん自身も通っていた東京都八王子市の将棋クラブで、
当時24歳の羽生さんが当時9歳の長岡少年に指導対局をおこなったのが
出会いのようである。
この指導対局は、羽生さんがハンデをつけるだけでなく、
一度に複数の人の相手をするというものであるが、
将棋好きな子からしたらどんなアイドル(芸能人)と会うよりも
嬉しいことだったろうと思う。
それから14年たった2008年の竜王戦。
竜王戦は先に4勝した人が勝ちであるが、
羽生さんは3連勝したのちに4連敗をし、永世竜王のチャンスを逃した。
将棋は長丁場の戦い(2013年12月のブログ参照)である。
このとき体力、気力が年齢と共に衰えてきているのを痛感したようだ。
一方、長岡さんはプロ入りして4年がたとうとしている時であるが、
プロ棋士として戦う傍ら、対局の生解説や将棋雑誌での解説という仕事でも
その力を発揮していた。
その雑誌の内容は、羽生さんをして
「内容が非常に高度で私が読んでも勉強になる。」
「本を見ればどれくらい研究・勉強しているかわかる。」と言わしめるほどで、
それで羽生さんの方から長岡さんに「練習相手をお願い」したそうだ。
番組の中で「最新の序盤戦術などは若い人が圧倒的に詳しい。」
と、15コも離れた後輩の力を認め
「非常にありがたい。」「毎回勉強になってます。」
「普段から研究会でお世話になっていますし、本当に私も勉強になっている。」
「助けられていると思っています。」
と、しきりに感謝する姿が印象的だった。
長岡さんにしてみれば、羽生さんはいつまでも恩師であり憧れの存在だろうけれど、
羽生さんは自分が先輩だ!師匠だ!などと偉ぶることがない。
後輩の実力を認め、またさらなる成長を期待しつつ、
自分もその後輩から学ぼうとする羽生さんは、やはり大きい人だと思う。