平井コーチの話によれば、
国際大会に出場できるようなレベルの選手の中にも、
挨拶ができない、きちっとお礼を言えない、
そういった選手がいる。
(隣を泳いでいる人のせいで)波があって泳ぎにくいとか、
他の選手の手が当たったとか、
うまくいかないのを環境のせいにしたり人のせいにしたりする選手がいる。
「じゃぁお前は波を作っていないのか。」と叱っても、
ふくれっ面になって全く反省をしない選手がいる。
水泳は個人競技の部分が大きいかもしれないが、
それでも指導してくれるコーチやスタッフ。
一緒に練習している仲間。友達や家族があってこそ、
成長していけるものである。
感謝したり、助け合ったり励ましあったり、そういうことができないならば、
きっと一流にはなれない。
少なくとも尊敬されるような人にはなれないと思う。
「その競技のトップになるということは、成績がトップだというだけでなく、
人間としてもトップをめざさなければいけない」
また、平井コーチの指導が厳しいのは、
「努力によって勝つ」という経験をして欲しいからだそうだ。
逆にたいしてがんばっていないのに結果が出てしまう方が危険で、
そういった危険を感じた時には、
敢えて結果が出ないようにしむけることさえあるのだという。
小さい頃に(努力ではなく)才能で勝ってしまった子が
「自分には才能がある」と思ってしまうと、
ともすると、うまくいかなかった時にその原因を自分の中に求められなくなる。
「運が悪かった」
「体調が悪かった」
「コーチの指導が悪いのでは?」
というように、原因を自分以外の中から探そうとしてしまう。
平井コーチはそうではなく、結果が出ないのは自分自身の
努力の量や質のせいだと思える強さを身につけて欲しいと思っている。
「平井コーチのもとではオリンピックを目指さないといけないのか?」
「レベルの高い子でないと平井コーチには見てもらえないのか?」
といった声があるらしい。
やるからには「高い目標を持て!」とか、
「自分の壁を超えろ!」とは思っていると思うが、
平井氏のやっていることは、たまたま彼の得意なジャンルが水泳だっただけで、
実は『人を育てる』という単純明解なことだと思う。