そのスピードは

44年ぶりにベスト4という快挙を成し遂げたオリンピックサッカー日本代表だったが、

オリンピック前にはとてもとても結果を期待できるような状態ではなかった。

というのも、オリンピック予選では危なっかしい試合が多く、

また今年5月にフランスで開催されたトゥーロン国際大会でも、

グループリーグ敗退(最下位)という結果に終わっていたからだ。

ではこの代表はただ単純に下手だったのかと言うと、もちろんそうではない。

技術がこの世代のトップレベルであるから代表に選ばれるのは間違いない。

しかしこのチームには何かが決定的に足りない感じがしていた。

そこにオーバーエージ枠で吉田麻也と徳永悠平が入った。

「明るさと軽さが紙一重で、危ないなと思っていた。」と吉田は言っていたが、

ただの仲良しグループになっていたところを2人が要所で引き締めたのだろう。

言いたいことは言い合える、メリハリのついたいいチームになっていったようだ。

オリンピックが開幕した。

初戦の相手は優勝候補筆頭のスペイン。

さすがに勝てるわけないと思っていたが、

このスペインを見事に破って勢いに乗りグループリーグを首位通過。

そしてその勢いのままベスト4入りを決めた。

正直、オーバーエージが入ったくらいでこんなに強くなるとは思っていなかった。

オリンピック前は、試合では大げさにファールをアピールして倒れ、

試合後には『模範的ではあるが他人事のような』コメントをしている選手たちを見て、

せっかくそんな大舞台に立てるのだからもっとガムシャラにやれ!

と、試合を見る度に勝手にストレスをためているくらいだった

(←じゃぁ見るなよという声が聞こえてきそう…笑)。

しかしこれだから止められないのだが、

若い人は短期間で見違えるほどに成長する。

全員とは言えないが、このオリンピックを経験して

飛躍的に成長したのが見える選手が何人もいた。

大津は彼を今まで見てきた中で一番だったし、

自分のメンタルが弱いのを何とかしたいと言っていた

清武の姿勢も素晴らしかった。

永井も自分のストロングポイント(長所)を生かしてずっと走り続けていたし、

山口や扇原に至っては、完全にオリンピック前とは別人なのでは

というくらいに成長したように思う。

オリンピックから帰国して最初の試合が先週の土曜日におこなわれていたが、

2人は早速そこでも活躍していた。

吉田も随分とたくましくなったと思う。

オーバーエージの2人が入ったこと、

チームが1つにまとまったこと、

強敵のスペインを倒して自信をつけたこと…様々な要因が考えられるが、

とにかくたった数日で見違えるように人は成長できるのである。

ガラッと評価を変えさせることができるのである。

大人の「どうせ…」という先読みが通用しない若さゆえの勢いは

見ていて羨ましいが、成長した人を見るとただただ嬉しくなる。

思えば本田や香川、長友らを擁した北京オリンピックは3戦全敗だった。

しかし今の彼らの活躍は皆様の知るところである。

勝ち負けだけでないところにも、成長するきっかけはあるのだろう。