学校選びの1つの基準として、女子校であっても
『理系(大学)進学に強いかどうか』を重視する人が増えている。
「文系だと就職が厳しいのではないか」とか
「国家資格を持っておくことが、このご時世、この不景気には必要だ」
というように考える方が最近は少なくない。
震災以降、医療系・看護系への進学希望者が増えているとも、
多くの学校で聞く。
昨日訪れた横浜雙葉でも、理系志望者が半数に迫る勢いだと言い、
昨年は医療系小論文という、学校が設定した対策講座の受講者が、
一昨年の倍で30名もいたという。
「君たちが大学を卒業してお医者さんになったとして、
そこで患者さんとして出会う人のほとんどが君たちよりも年上。
もっというと、はるかに年配のおじいさん、おばあさんである可能性が高い。
そのことについて、どう感じるか。
君たちよりもはるかに年上の患者さんが、
どんなことを考えて、どんなことを感じているかを、君たちは考えられるか…。」
その講座を担当された先生は、こんな話をされたそうだ。
なぜこんな話をうかがうことになったのかというと、
「理系進学者が増えることは大いに結構なことだけれど、
こんな時代だからこそ、文系の『心』を育てるということが、
とても必要なことではないか。」
というような話をちょうどしていたからである。
(あくまでもたとえ話として) もし、お医者さんが手術をする時に、
患者さんを実験道具のように考えていたとしたら…
手術が成功しさえすれば問題ないのかもしれないし、
お医者さんが何を考えているかなんて患者さんは知る由もないのだから、
そんなことはどうでもいいことなのかもしれないが…やっぱり怖い。
心の通い合いというか、患者側の肉体的な痛みだけでなく、
精神的な不安や痛みまでもわかってくれるような、
そんなお医者さんであってくれたらと思う。
(もちろん本当はそんなことまで気をまわしていたら、
逆にお医者さんの心がもたないのかもしれないが、
それでも…と思ってしまう。)
話が飛び過ぎたかもしれないので、もう少しだけ身近な話題にしよう。
このブログでも度々紹介している「おかぽの中庭」で、
『三浦雄一郎氏、エベレスト登頂に成功』というブログがあったが、
おかぽ先生はご自分の担当している授業の中でも
生徒たちにこの話をしたそうだ。
「80歳の三浦雄一郎さんが、エベレスト登頂に成功したそうだね!」
その時の生徒たちの反応の多くは
「知ってる〜!」「ニュースで見た!」というものだったらしい。
違うんだよ。知ってるかどうかを聞いているわけじゃないんだよ。
ニュースを見てるかとか、新聞を読んでいるかとか、
物知りかどうかを試しているわけではなくて、
80歳でエベレストに登ったことに対して、
それぞれがどう思うかどう感じたかを聞いているんだよ!考えて欲しいんだよ!
語りかけは大事なことだと思う。
安易に就職のことや将来の安定だけを求めて理系志望者が増えるのではなくて、
こういう語りかけも横浜雙葉にはちゃんとあるのだとうかがえて、
本当に良かった。
その先生はこうもおっしゃっていた。
「子どもたちに感動を体験させたい。」
静かな声のトーンではあったけれど、僕にはずっしり響いた。