どの塾のホームページにも「合格体験記」のページがある。
あるいは、そこかしこに、受験経験者の
「良かれと思って」のアドバイスが溢れている。
だが、塾生の親御さんと実際にお話ししてみると、
例えば、姉にうまくいった方法や声掛けが、
弟には全く効果がなかった!というような話もよく聞く。
姉弟ですらそうなのだから、赤の他人の成功体験など、
冷静に考えたら役に立つことの方が珍しいのではないか。
三男一女を全員東大理Ⅲに合格させた佐藤ママは有名であるが、
そもそも、佐藤ママの言う通りに子どもを育てるのも難しいし、
たとえ、その通りに育てたとしても、同じ結果を得られるかというと、それも怪しい。
つまり、他人の成功例やアドバイスをなぞったところで、合格するとは限らない。
10人の合格には10通りの理由がある。
しかし、不思議なもんで、10人の不合格に10通りの理由はない。
大体、2つ3つの理由に集約される。
だから、毎年受験生を見ている者にとっては、
デジャヴのような、そんな感覚になることも多い。
例えば、(サーパスではあまり聞かないが)
「〇〇以下の学校は受けさせません。ダメなら公立でいいです!」
と、親の一存でセーフティーネットを準備しない受験スケジュールでいくパターン。
『背水の陣』で、子どもの覚悟を求めたいという気持ちもあるのかもしれないし、
行かせる気のない学校を受験するなんて、お金と時間の無駄だと思う気持ちもあるだろう。
だが、どんな理由であっても、このパターンでうまくいくことはとてもとても少ない。
背水の陣で覚悟が決まるどころか、失敗できない恐怖で縮こまるだけである。
おそらく、塾で働いたことがある人なら、どの塾に勤めていたとしても、
こういうご家庭に出会ったことは何度かあると思う。
その先生方に。「仮にこういうご家庭に100回出会ったとして、
そのうち、第一志望に合格できた子は何人いましたか?」と聞いたら、
きっとどの先生も一桁の人数か、0人と答えると思う。
しかも、第一志望に合格できないどころか、どこも合格できないことが多かった
と答えるのではないかと思う。
体感では、どこも合格できなかった子は8割を優にこえるイメージである。
そのくらい、この受験パターンは危ういのだ。
だが逆に、セーフティーネットの準備を受け入れてもらえた場合は、
一気に第一志望の合格可能性が上がる。
少なくとも(第一志望ではなかったとしても)行って良しの志望校には合格できる。
つまり、最悪のケースになることはないし、
用意したセーフティーネットに落ち着くことすら少ない。
行かせる気のない学校を勧められたら、きっと嫌な気持ちになると思う。
こちらも、勧めるのは心苦しい。
嫌がられるのをわかっているのだから、言わずに済むなら言いたくはない。
だが、これもサーパスの合格率に繋がっていると思う。
ごくたまに、「そんな甘っちょろいことをさせるくらいなら、
不合格で現実を知って(痛い目を見て)、高校受験でリベンジした方がいい」
と、おっしゃる方もいるが、大人はそれで良くても、子ども自身はどうなのだろうか。
失敗する可能性が高い道をわざわざ選んで痛い思いをさせるよりも、
成功する可能性を高めてあげた方が…と思う。