小学校で筆算を教わるときには、筆算の途中で登場する横線を
「定規で引いて!」と指示されるようだが、
中学受験の塾では、その横線を
「定規を使わずに(フリーハンドで)引いて!」と指示する。
小学校で定規の使用を徹底させるのは、
『式や筆算をきれいに書く』『きれいに書くことで計算ミスを減らす』
という目的のほか、『定規の基本的な扱い方』を学習させたい意図だろうから、
(こういうところは、公教育が担ってくれている大切なところだと思う。)
こちらに異を唱えるつもりは全くない。
だが、こと中学入試に関していうと、
算数の入試のときに定規を使用してはいけない学校が多いから、
フリーハンドできれいな線を引けるようになっておいた方がいいし、
何より、筆算の際にいちいち定規を使っていたら、時間がかかって仕方ない。
要は、ケースバイケースでの使い分けが必要なのだが、
こういうときに、「子どもが混乱する!」という意見が話題になることがある。
だが、特別な事情がある場合を除けば、
使い分け(の意識)は、いつでも、どこに行ったとしても必要なのだから、
その練習をしていると割り切って考えればいいのではないかと思う。
もう1つ付け加えると、
算数入試の際に、定規を使用してはいけないというルールがある以上、
塾で「定規を使わずに」という指示をした際、これに反論されるケースは少ない。
だが、もし小学校でのその指示には反発するのだとしたら、
それはよろしくないのではないかと思う。
確かに、定規を使わなくても、きれいな真っ直ぐの線を引ける子もいる。
そこまできれいに書けていなくても、計算ミスをほとんどしない子もいる。
だから、そういう子にとっては、小学校の指示はナンセンスに感じるかもしれない。
だが、小学校において、できる子に合わせろというのは、さすがに暴論であるし、
それぞれ好きなようにしていいなどという風にしたら、クラス運営はきっと難しい。
少々話が飛躍するが、そのクラスを大切に思っている子もいるはずである。
また、指示に納得がいかないからと、反発してストレスをぶつける子にとっても、
その結果、荒れたクラスになったら、良いことなんて何もない。
殺伐とした空気、落ち着かない環境の中で過ごすと、心がおかしくなる。
人間の尊厳を傷つけられるような指示をされたのであれば、
きちんと憤っていいと思うけれど、
たかだか筆算の横線を定規で引くか、フリーハンドで引くかなど、
目くじら立てるようなことではあるまい。
むしろ、ここでは定規を使う、こっちでは使わない、
と自分の中に複数のチャンネルを持つ練習になっていいと思う。