20代の半ばに差し掛かろうというとき、私は漠然とした不安を感じていた。
その当時も、毎日やりがいを感じながら塾の仕事をやってはいたのだが、
このまま塾に10年20年…といて、
例えば40歳50歳になったとき、私は(先生として)大丈夫なのだろうか。
塾という場所に需要があるのだろうか。
そんな不安もあって、一時、営業職に就いていたことがある。
(過去ブログ2015.11.11「反省」と、2019.9.19「大人の社会を~」参照)
今日はその、塾の仕事を辞めて営業職に転職する前の話である。
私自身の中では、転職するという結論は出ていたのだが、
突然辞めれば、所属していた校舎に迷惑がかかる(可能性がある)。
教えていた生徒にも、そのご家庭にも迷惑がかかる(可能性がある)。
だから、結論は出ていたので相談ではないのだが、
同僚の先生に退職するつもりであることを事前に話すことにした。
(転職活動はその時点ではしていない。)
その同僚の先生は、年齢は私よりも少し上であるのだが、
人の意見を頭ごなしに否定したり、自分の考えや意見を押し付けたりしない
物腰柔らかで優しい、そして面白い先生だった。
その先生は、私の退職の意と、そこに至った経緯や考えを伝えたとき、
最初は残念がってくれたが、やはり思った通り無理に引き留めたりもせず、
その判断を尊重してくれた。
だが、その後、「先生だけをずっとやり続けるのはダメなのかなぁ」
と、独り言のように呟かれた。
そのとき私は何も返事をしなかったのだが、
この一言は、いまだに私の心の中に引っかかったままでいる。
私はその年度の受験生を送り出した後、退職し、
同僚の先生とは疎遠になってしまった。
年上の先生に対して、出過ぎたことかもしれないが、
優しすぎる先生なので、精神的にやられていないかと心配にもなる。
だが、今でもきっと、生徒からは慕われているのだろうと思う。