国立情報学研究所(NII)が中心となって
2011 年よりスタートした人工知能(AI)開発プロジェクト
「ロボットは東大に入れるか」(略称:東ロボ)
が、東大合格を断念したというニュースがあった。
そもそも、このプロジェクトは、
東大入試を突破できるプログラムを開発することにより、
「思考するプロセス」を研究しようというものである。
問題を読んで答えを導くまでの全プロセスを実現するためには、
言語理解をはじめ、さまざまな人工知能技術を
実際につなげて動かさなくてはいけない。
また、「思考するプロセス」というのは、人間にとってはあたりまえでも、
その計算方法は謎なことがまだまだたくさんあるため、
これまでの人工知能研究では手つかずだった課題にも挑戦することになる。
具体的に挙げられていた課題の例としては、
1、「鎌倉幕府は1192年に始まったとされていたが、
現在では実質的な成立は1185年とする説が支配的だ。」
が成り立つとき、
2、「12世紀に日本では鎌倉幕府が開かれた。」
も成り立つと、人間はすぐにわかるけれども、
これをロボットにわからせるのは、なかなか難しいということだった。
この東ロボくん。
東大の2次試験を想定した論述式模試「東大入試プレ」
の理系数学で、偏差値76.2を記録。
その他の科目も安定して偏差値50以上を取れるようになったというから、
確実に研究の成果を上げている。
しかし、新井教授は、
「AIは意味を深く理解しなくてはいけない問題が苦手。
論理的に解こうとしたときの限界がある」
とのことで、今後は得意なことを伸ばして産業応用への道を目指すと発表している。
さて、この発表時、興味深いというか、危機感を感じさせられる発表があった。
それは、「AIが問題文の意味を理解していないにもかかわらず」
「8割もの高校生がAIに敗れてしまった」という部分で、
「中高生も、AIと同様に教科書や問題文が読めていないのでは」
と分析しているところである。
例に挙がっていたのは、
『「仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている』
という例文から
「オセアニアに広がっているのは( )である」
という文の空欄にあてはまるものを選ぶ問題がある。
文章をしっかり読めば、答えがキリスト教であることは明白だ。
しかし、全国約1000人の中高生のうち、約3割が正答を選べなかったという。
他にも問題文に回答が書いてあるような同様の問題で、
文章を正しく読み取れない生徒が一定の割合で存在しているという。』
遠くない将来、人工知能を持ったロボットが活躍する時代が来て、
今ある仕事の多くがロボットに取って代わられると予想されている。
「計算の正確さと暗記の正しさで人間がAIに負けることは何も問題はなく、
人間はAIを使って生産性を上げていけばいい。
しかし、(AIが苦手な読解力を伸ばさずに)AIが得意とする分野で
人間が対抗しても勝てないだろう」
「正直言って、東ロボくん(AI)の性能を上げるよりも
中高生の読解力を向上させるほうが国民としては直近の課題だ」
本当にそうだと思う。