「終わったね。」
「終わりましたね。」
こんな10字にも満たない言葉しか発することのできなかった新中一準備講座終了日。
それから数日経った3月22日。
卒業遠足当日。
好天に恵まれた遊園地の敷地で無邪気にはしゃぐ生徒たちを見ていると、
嬉しさと切なさが交互に頭をもたげてくる。
「いよいよお別れか。」
この日は生徒だけではなく、これまでお世話になったご父母の皆様とも
数多く忌憚のないお話をさせて頂いた。
このような機会も思い出の扉に閉じられてしまうと思うと
何ともやりきれない思いに駆られてしまう。
「さまざまの/こと思い出す/桜かな」と芭蕉は詠った。
芭蕉の世界には到底及ぶべくもないが、私も桜を見るたびに、
かつての「さまざまなこと」を思い返し、すばらしき日々を想起していこうと考えている。
とは言え、記憶は風化しやすいもの。
忘却との戦いの第一歩として、
ここに4期生を「備忘録」として綴っておくことにする。
備忘録
私は忘れない 心が折れそうになるほど悔しそうなあなたの表情を
私は忘れない 周りの空気を気にして泣くに泣けないあなたの戸惑った口元を
私は忘れない 人知れず一人孤独に陥ってしまった時のあなたのずきずきとした痛みを
私は忘れない 己の気の弱さに打ちひしがれてしまったあなたのとめどない苦痛を
私は忘れない 気遣いで本当の自分を見失いそうになるのを必死にこらえるあなたの小さなこぶしを
私は忘れない 「そんなに強くないのに」と自分のふがいなさを嘆くあなたのうめきを
私は忘れない 腹の底から突き上がるあなたの爆発的な笑いの雄たけびを
私は忘れない 叱られても叱られても涙を浮かべながらもへこたれないあなたの打たれ強さを
私は忘れない 宿題を忘れテキストを忘れてもひょうひょうと受け流すあなたの豪胆さを
私は忘れない 授業中にレーザービームのように時折放たれるあなたの天然無垢な一言を
私は忘れない 心の素直さから泉のように湧き上がるあなたの純粋な笑いと感動の涙を
私は忘れない アルバムには収めきれないあなたとの無数の言葉のキャッチボールを
私は忘れない あなたのために陰ながら涙をこらえていたあなたの母の気丈さを
私は忘れない あなたのことを人一倍気にしながらもひたすら守りに徹したあなたの父の愛を
私は忘れない あなたとサーパスで過ごしたかけがえのない日々を
私は忘れない 今日というあなたの未来への旅立ちの第一歩の日を
本当に出会えて良かった