いちょうの葉

君には青空は似合わない

君には雨上がりの曇天こそ似つかわしい

満身創痍のその身体には

何よりも湿り気が必要なんだ

今年も残りあと何日と

指折り数える年の瀬となると

君は決まって重みを失う

凍てついた金属音を足下に響かせ

カラカラコロコロと舗道を飛び散らう

でもひとたび時期外れの水浴びをすると

君はその本性をむき出しにする

君は誇りに満ちあふれ

世界そのものを黄金色で支配する

やがて到来する凛とした存在への

壮絶なる抵抗でなくて何であろう!

そんな君に昼間の日射しはそっけない

そんな君の味方はたったの2人

でも君にはそれで十分すぎるはずだ

朝焼けは君をダイヤモンドの粒で彩り

夕焼けは君の激闘をルビーの波間で癒す

君はこれ以上何を望むのか?

もはや音を奏でることなく

静かに初冬のじゅうたんを敷きつめると

君は少しずつ少しずつ私のもとを去っていく

名残りという名の感傷にやさしく気遣いながら…

さあ、いよいよ冬本番だ!

歩道の枯枝をくっきり染め上げた青空を見上げながら

君のバトンをギュッと握りしめ

私はそそくさと先を急いだ