金メダリスト北島康介選手を指導した名コーチ、
平井伯昌(のりまさ)さんがこんなことをおっしゃっていました。
「小学生の頃からずっと指導を担当していた子が、高校生になった頃、
突然成績が思うように伸びなくなったんです。
どうしてなのか、非常に悩みましたが、理由がわかれば何ということはない。
自分で考えることを知らなかったからでした。
スポーツ選手は基礎を習得し、ある程度のレベルまで来ると、
自分には何が足りないのか、それを強化するためにはどんな練習をすればよいのかを
自分で考えなければならない時期にぶつかります。
この時、言葉でうまく表現できない選手はダメですね。
ほとんどの場合、それ以上の成長は見込めません。
言葉に出して冷静に自分を分析することが次のステップにつながるのです。
頭の中だけで考えていると、曖昧な分析で終わりがちですが、
言葉に出すと客観的かつ明確に分析せざるを得ません。
だからこの作業は選手の成長には欠かせないのです。」
「言葉の大切さがわかった頃、ちょうど出会ったのが北島康介でした。
最初の頃は、彼も曖昧で自らを分析できていない節がありました。
それが、トレーニングを積み重ねるごとに、
出てくる言葉が徐々に明確になっていったのです。
『今日は体に当たる水の感覚がいい』だとか『次は腕を動かす練習をしたい』とか。
コーチにとっても選手からもたらされる、こうした情報はとても重要です。
意思疎通がうまくいくようになると、練習内容も組みやすいし、選手の上達も速い。」
平井コーチのこの最後の二言は、僕らにとってもずばり当てはまります。
みんなが今何に困っていて何を求めているかを、察してあげることはできます。
でも、察してあげるにはどうしたって時間がかかってしまうのです。
そうであれば、一言「○○ができなくて困ってるんだ!」と話してくれたら
時間をかけずに手を打てる可能性が出てきます。
「こんなこと相談していいのかな?」なんて思わなくて大丈夫。
むしろ、何か悩んでることがあったりアドバイスが欲しかったりした時は
さっさと話して解決してしまった方が得ですよ!