僕の担当クラスの子には話したことがある、だいぶ昔の教え子のお話です。
その子は、算数を比較的得意とする女の子で、次に得意なのは理科。
得意科目が明らかに理系に偏った子でした。
逆に、文系科目はなかなか厳しい状況で、
特に国語については、首都圏模試で偏差値50ギリギリくらいの成績。
つまり、模試の(4科目の)偏差値では、あまり高い数字を出せない子でした。
しかし、その子には絶対に行きたい憧れの学校がありました。
フェリス女学院中学です。
小学校5年生の秋のことです。まだ、夏の暑さが残っているときでした。
首都圏模試を受けたけれど、いつも通り国語がボロボロだったということで、
その子が職員室にやって来ました。
そして、国語の先生の前に立って、
真っ直ぐに目を見て、ボロボロ涙を流しながら言うのです。
「国語ができるようになりたいです。」
「どうやったらできるようになりますか。」
「何をやったらいいですか。」
と。
繰り返しますが、この子、このときまだ5年生です!
そりゃぁ、こっちだって、
「なんとかしてやらにゃ!」
「ここでこの子を伸ばせなかったら、何のために教える仕事に就いてるんだ!」
ってな気持ちになりますよ。
僕がその子に教えていたのは算数でしたが、その子の気持ちは十分に伝わりました。
仮に入試当日、国語で思うような点数を取れなくても、
「算数でカバーしてやる!100点取れるようになんとかしてやる!」
と、国語の先生の隣で決意していました。
お父さんかお母さんに、
「どうやったら国語ができるようになるか、先生に聞いておいで!」
と言われて、メンドクサイと思いながら渋々相談に来たのではありません。
5年生が自らを変えたくて「どうにかしたい!」と思ったときの、
心からの叫びみたいなものが溢れ出たのだろうと思います。
そこから1年半、子どもにとっては、結構な長さですが、
その子は一生懸命に頑張っていました。
そして、無事に憧れの学校にも合格しました。
漫画のように、国語が得意になるまでにはならなかったようでしたが、
どの科目で合格点に届いたっていいんです。
彼女の意思の強さというか、気持ちのこもった頑張りをずっと見てきましたからね。
尊敬と労いとが混ざった「おめでとう!」でした。