中学受験が選択肢の1つになる理由③

中学受験をする子の動機は様々であるが、同様に、
子どもに中学受験をさせようとする親の動機も様々である。
しかし、様々ではあるのだが、その中で、
中学受験を経験した親が考える『中学受験をさせたい理由』には、
共通点もあるように思われる。
そしてそれは、奇妙に聞こえるかもしれないが、
「私立の教務力(授業力)を良いと思っているから」ではないと思う。

むしろ、自分(親)が通った私立にも、授業の下手な先生、睡眠に誘う先生、
何を言っているのかよくわからない先生もいたと、身をもって知っている分、
私立に通えば、全ての科目で高度な授業を受けられるとか、
大学受験にそれだけで有利だとか、そういう風には考えていないのではないか。

 

では、中学受験を経験した人は、何を良いと思って、
それを子どもにもさせようと思うのかというと、
これまた様々であると思うけれど、勉強面に関して、と限定するならば、
受験に出るか出ないか、そういう狭い視野から抜け出て、
調べ学習に多くの時間を割けるとか、実験をたくさんできるとか、
中学生や高校生の範囲を超越して、アカデミックなことに触れられるとか、
要するに、高校受験が途中にないことで、
一見無駄に見えることにも多くの時間を使えることが良い!
などと考えていたりするのだと思う。

 

よく、公立からも大学には行ける!私立に行く必要などない!と言う人がいるけれど、
僕自身の経験で言えば、高校受験を指導していたときも、
高校生相手に大学受験を指導していたときも、
公立の学校の授業は、私立よりも無駄がないように感じた。
まさに、テストに出ること、点数になることが、授業で教えられているのだ。
だから、最終学歴に対して、費用対効果を!とか、最短距離を歩ませたい!
と効率を求めるなら、むしろ私立の方が遠回りさせているとも言える。

もっと言えば、公立に通って、早い段階で塾通いを始めるか、
あるいは、学校には行かずに、塾通いをした方が大学合格には近いかもしれない。
(↑実際、高校に行かずに、高卒認定試験だけを受けて大学進学を目指すのが、
勉強面でも金銭面でも無駄がないと考える御家庭がいらっしゃいました。)

 

要するに、中学から私立、まして進学校などと聞くと、
勉強ばっかりのイメージを持たれる方もいらっしゃると思うけれど、
その勉強の中身は、大学入試に直結するような、
いわゆる点を取るための勉強ではなくて、
広く深い教養をつけるための勉強の割合が高いのである。

そして、その傾向は、いわゆる伝統校になればなるほど強くなる。
すなわち、近頃は、社会に出てすぐに役立ちそうな教育(英語教育やICT教育など)
に力を入れる最先端の学校が人気を集めているが、一方で、
古典も含めた国語教育だとか、実際に足を運ぶことで体験の機会を増やすとか、
そういうところを大切にする伝統的な教育方針の学校もある。

ここの好みは分かれると思う。
どちらにも良さがあって、大切なのはバランスだと思うけれど、
中学受験経験者である親御さんが、テレビや雑誌で取り上げられて
偏差値が急に爆上がりしたような新興校に飛びつかないのは、
勉強(教育)に関する遠回りを良しとしているところが、
大いに関係しているのではないか、と思ったりする。