中学受験が選択肢の1つになる理由(蛇足)

高校受験も指導していた頃、ある学年に飛びぬけて優秀な子がいた。
毎年毎年、それぞれの学年に優秀な子は一定数いるものだが、
その子は、何年かに一度お目にかかれるかどうかの、
飛びきり優秀な子だった。

模試の順位は中学3年間ずっと1位だったし、
偏差値は常に70を大きく超えていたけれど、それだけの話ではない。
模試で1位の人は、必ずどこかにいるが、
同じ1位だからといって、そんじょそこらにいるような人間ではない。

彼は真面目で、素直で、あらゆる意味で姿勢のいい子だった。
運動部に所属していて、その部活も一生懸命だったし、
合唱コンクールのような行事にも、一切手を抜かない。
人を見下したり馬鹿にしたりすることも、全くない。
おとなしいが、脱線話でもニコニコ笑うようなナイスガイだった。

しかし、その彼は、「自転車で通えるところがいい!」という理由で、
家から一番近い公立高校を第一志望にしていた。(経済的な理由ではない。)
受験に絶対はないというけれど、彼の受検に関しては、
もう、万が一も無いくらいで、当たり前のように合格した。
本人の希望通りの受検。
本人の中では、苦しかったことや、大変だったこともあったのかもしれない。
だが、傍から見ている分には、これ以上ないくらい順風満帆。
経済的にも親孝行であるし、子どもの見本!と言ってもいいかもしれない。

 

 

なのに、、、当時、彼を教えていた先生たちは、揃って、
もったいないなぁ…と話していた。
本当に余計なお世話なのである。価値観、人生観は人それぞれなのだ。
塾の先生なんかが、人様の人生にもったいないなどと…何を生意気な!
と思う人もいるかもしれない。
僻み?と感じる人もいるかもしれない。

 

今、メジャーリーグで活躍中の大谷翔平選手が、日本ハムに在籍していた頃、
どんなに活躍した後でも、当時の監督だった栗山さんは、
「翔平はこんなもんじゃない。」と、よく言っていた。
その感覚に近いんじゃないかと思う。
サッカーで言うならば、Jリーグで試合に出続けることも、すごいことなのだけれど、
海外のチームに移籍して揉まれてほしい!と思う感覚に近いかもしれない。

 

(直接的には、今回のブログに登場した彼のことではないのだが、)
いわゆるトップ校に進学しても、成績が思うように取れずに、
低空飛行になってしまうことを心配する方がいらっしゃる。
もちろん、勉強のペースを掴めなかったり、その結果、成績が良くなかったりすると、
学校生活を楽しめなくなる可能性は上がってしまうのだが、
上には上がいることを知ったり、どうやっても適わない才能の持ち主に出会ったり…
という経験は、それはそれで貴重な財産となる。
そういう、圧倒され、打ちのめされる経験も、面白いと思うのだが…。

まぁ、余計なお世話。蛇足である。