親には言えない子どもの本音

塾の実績ページで「全員合格」と載せている中学受験塾は多くない。
高校受験であれば、その制度の性質上、そこまで珍しい話でもないが、
中学受験の世界では、全員が合格するというのは、実はかなり難しい。
(理由については、話が広がり過ぎるので、ここでは割愛させていただく。)

だが、「全員合格なんて、インチキだ。」
「進路指導で生徒をより安全な学校の受験に導けばいいだけの話じゃないか。」
と、そういう見方をする人もいる。

 

昔、サーパスではない塾で教えていた頃、自分の教えていたクラスの子を
1人だけ合格させてあげられなかったことがあった。
「○○以下の学校は受けさせない。ダメなら公立でいい。」
と、親御さんに押し切られての、リスクを抱えた受験だった。
もし、もう少し受かる可能性の高い学校を強引に勧めていたとしたら、
その子はきっと合格を手にすることができただろう。しかし、それは
先ほどの「安全校に導いた」ということに繋がるのかもしれない。

だから、そういう見方をする人が間違っているとは思わないし、
それは全くもってその通りだと思う。
しかし、「安全校に導いた」と後ろ指さされたとしても、やはり、
受かる可能性のある学校の受験を勧めておけばよかったと、
僕はその時のことを今でも後悔している。

 

以下は、鳥居りん子さんのコラムであるが、
『中学受験「“公立”中高一貫しばり」の落とし穴⋯
…親にも言えない子どもの本音とは』
https://www.cyzowoman.com/2021/07/post_349149_1.html
このコラムは、公立の一貫校しばりが1つのテーマになっているが、
公立であるかどうかが子どもにとって大事なわけではない。
子どもにとっては、最後のページに書かれている内容、
親にも言えない本音があったというところが問題なのだと思う。

 

先述の子を合格に届かせてあげられなかったことが1番の後悔である。
だが、もう1つ後悔があって、それはその子の不安な気持ちを知っていながら、
その子のために親御さんを説得しようとしなかったことである。
勧めたところで、親御さんを不快にさせ、怒りを買うだけで、
どうせ聞いてはもらえないと、言うのを諦めたことである。

自分のやるべきことをやりきらずに、途中で投げ出して逃げた。
その後悔から、その後は、そういうことのないように生きてきた
そう言えたら、少しは格好いいのかもしれないが、
その後もまだ後悔することの連続である。

「ウチの子には中学受験は無理だった」「向いていなかった」「まだ早かった」
「ウチの子の力ではついていけない」「かわいそう」
まだ幼くて頑張り切れなかったり、頑張り方がわからなかったりして、
親から見たら物足りなくても、もう少し長い目で見てくれたら…と、
まぁ、そんなこんなの紆余曲折、山あり谷ありどころか、
谷あり崖ありを乗り越えた先にようやく「全員合格」がある。