誰のための改革か

かつてのセンター試験は、国公立大学を目指す人にとっての第一関門だったが、
その後、私立大学もセンター試験利用入試という形で、次々に参入したので、
今ではセンター試験を利用する人の数は55万人という数字になった。

センター試験利用入試のメリットは、ざっくり以下の通りである。
例えば、A大学、B大学、C大学…と、複数の私大を受験したい場合、
普通は3万円強の受験費用をそれぞれの大学(学部)に払って、
それぞれの試験日に、それぞれの試験問題を解かなくてはならないが、
このセンター試験利用入試は、1種類の問題(センター試験)を解いた結果によって、
複数の大学から合格をもらうことが可能である。(出願料も約半額とお得である。)

また、単純に、センター試験利用入試と、2月の本試験と、
同じ大学を2回受験できるというだけでも受けておく価値があるし、
私大の本試験は、重箱の隅をつつくような、マニアックな問題も出題されるが、
センター試験には、そういう奇問は出題されないので、対策もしやすい。
しかも(国公立と)一般的な私大の入試は2月にあるが、
センター試験は1月なので、うまくいけば、滑り止めを確保してから、
本命校に挑むことができる。

このように、メリットだらけの制度なので、受験者が多いのはうなずける。
だが、これだけお得感があると、
なんちゃって受験生が増えてしまうのも当然と言える。
要するに、ダメ元で受験しに来る人が増えるのである。
自分に絶対必要な科目は英国社の3科目だけれど、
数学や理科も運良く、点取れたりして…というような淡い期待を抱く人もそうだし、
中には、すでに推薦やAO入試で合格しているけれど、
一応受けておこうという人たちもいる。
結果的に、国公立志望の人たちだけが受けるよりも、
平均点がガクンと下がってしまう。

それでも、平均点が6割前後に落ち着くようなテストを作らないと、
「難しくなった」だの「知識偏重」だのと、難癖をつけられる。
だから(本来の国公立志願者にとっては)、簡単なテストにするしかない。
(もちろん東大だけが国公立ではないが)東大を志望するような人にとっては、
9割取って当然のようなレベルのテストになっているのである。

 

センター試験制度の変更がおこなわれる。
批判的な意見を出す人がいてもいいとは思うが、
本来の国公立志望者にとっては、この試験は決して難しくないのに…である。

どういう制度になるのか全貌が見えず、どんな準備をしたらいいのか、
一年浪人することでどんなリスクがあるのか…
と、ただただ未来の受験生を不安にさせている。
挙句、記述の採点を大学生のアルバイトにやらせる案まで出ている。
間違いなく、国公立を志望する人のための改革にはなっていない。