コーヒーを飲みながらこう考えた。
日に射されれば、汗が出る。
部屋にこもれば愚痴が出る。
足をのばせば人ごみだ。
とかく夏場はやるせない。
やるせなさが高じると、詩が書きたくなる。
ここで夏の創作で一興…
かの夏の日の 帰り道
はにかみながら 足下の
石をけりつつ 気はそぞろ
君に寄り添う 凪の空
君の遥かな まなざしは
永久(とわ)の水際に 見いってる
知る由もなく 残されて
ぼくは無邪気に 口笛を
ピーピーューヒュー 吹いていた。
嗚呼果てしなく 青い空
彼方にそびえる 入道雲
夏が来るたび 坂道を
自転車走らす 風切って。
古人の愛でし 夏の宵
梅雨明け空に 雲はなく
上弦の月 皓皓(こうこう)と
銀杏並木を 染め上げる
泥(なず)む心は 力なく
いたづらに時 過ぎてゆく。
数かぎりない 星々は
湿った大気の 彼方にて
かすみかがやき 繰り返す。
嗚呼とめどなく 波立ちて
沖に消えゆく 潮騒の
ごとく素直に なれぬ闇
嗚呼等閑(なおざり)で やるせない
湿った心を 打ち砕く
のはただ君の いわれ無き
無垢なまなざし のみなのか…。
時代は巡り 風が吹き
夏は真夏で あることを
やめたしまった 熱の波
夏の主役は 校庭を
去ると大地は 声もなく
砂漠と化した 無機質の
檻が時間を 閉じ込める。
けれどやっぱり でもほんと
君は陽気で 逞しい
時のシンボル 旬なんだ。
何せ君には 僕たちを
孤独にさせない 相棒が
いるのだからね 相棒が
嗚呼嗚呼蝉よ 空蝉よ
誰がために君 さんざめく
青春の日々 もう一度
君が響きで 呼びさませ。