あちらを立てればこちらが立たぬ

サーパスでは、各ご家庭にメールで宿題をお伝えしているが、
昔の塾は、どこもそんなことは一切していなかった。
授業終わりに先生が黒板に宿題を書いて、それをメモらせる。
それでおしまいだった。

ところが、10年ほど前、東戸塚に塾を出すことになって、
それまでと同じやり方でやろうとしたら、保護者から要望があった。
「親にも宿題を伝えてほしい」と。

この要望は、複数の方からあった。
親も(子どもが)何をやらなければいけないのかを把握しておきたい、
と、こういう理由の方と、
子どもが宿題をメモして帰ってこない、(子どもに)宿題は無い!と言い切られる、
という理由の方といらっしゃったが、
まぁ、宿題をメールするくらい、そんなに手間でもないし、
今はそういうことが必要な時代なのだろうと判断し、
早速、メールでその日の授業内容と宿題をお伝えするようにした。

 

すると、今度は別の保護者から新たに質問が入った。
「宿題を親が管理しないといけませんか?」
「できるようにさせてから、塾に行かせた方がいいですか?」と。

これはすなわち、サーパスの入り口段階で、
家庭で親が勉強を教えなくていい、勉強の管理をしなくていい。
と言っていたこと(塾のコンセプト)と違っているのではないか?
という質問である。だから、この質問は、
サーパスのことを理解してくださっている方からの、
むしろ至極当然の疑問である。

あちらを立てればこちらが立たぬという典型例である。

 

また、お父さんお母さんの世代が中学受験をした頃は、小テストなるものは、
大概、抜き打ちでおこなわれるものだったと思う。
だから、毎週、毎回、突然テストがおこなわれる可能性も予期して、
復習やら準備やらをしたのではないかと思う。
ところが最近は、「今日テストある?」と聞きにくる子がやたらと多い。

テストを「やる」と言われたら勉強し、「やらない」と言われたら勉強しない、
そういう姿勢で難関校を目指そうとすること自体、本当は無理があると思うので、
「テストをやるって言われなくても勉強した方がいいんじゃない?」
なんてことを言うのだが、言ったところでなかなか響くものでもない。
かといって、「その姿勢では難関校は無理なんじゃない?」
などとも言いづらい時代になった。昔ならこの言葉で奮起する子もいたが、
今は、「無理って言われた」と、言葉の一部を切り取られるのがオチだ。

「テストをする」と伝えることで勉強する子もいる。
だが、それをすれば、(誰に言われなくとも)勉強しておこう!
という気づきや姿勢は生まれにくい。
これまた、あちらを立てればこちらが立たぬのである。