遅ればせながら今年も

自分が子どもの頃は、終戦記念日にはその特集番組ばかりが
テレビで放送されていたような気がする。
戦争を題材にしている番組だから、見ればツラく悲しい気持ちになるのだが、
この日(というより8月15日くらいまで)は、そうあるべきだ
とさえ、子どもながらに思っていた気がする。
長崎で生まれたということが多分に影響していたのだとも思う。

だが、今年は、少なくともテレビの地上波では、
そういった特集番組は、全くというほど目にしなかった。
NHKでは『もしも日本が戦争に巻き込まれたらどうするか』
という討論番組を放送していたようだが、もしも戦争に巻き込まれてしまったら、
つまり、戦争がすでに始まってしまっていたら、
そのときにはきっと一般市民はもう何もできない。
そこから他国に逃げるなんて、島国の日本ではもはや不可能だと思う。
ラクダで砂漠は越えられても、イルカで海を越えることはできない。

 

気楽に見ることができて、嫌なことやストレスを発散できるテレビ番組の方がいい。
テレビをつけて、わざわざツライ気持ちになんてなりたくない。
そう思う人が多ければ、特集番組を放送したところで視聴率も取れないだろうけれど、
その、(戦争が)始まってしまったらどうにもできないということ、
無慈悲に、あっけなく、身近な人の大切な命が奪われてしまうこと、
戦争とはそういうものだということを知る機会が減っていくのは、
それはそれで危険な気がする。

若い人たちも、戦争が良くないものであることは知識として知っていると思う。
だが、その知識をもとにできる想像よりも、
もっともっと、はるかに悲惨で目を背けたくなるものが戦争なのだと思う。
(小さい子にまでそれを見せるべき、教えるべきとは言わない。)
その悲惨な戦争のことをちゃんと知れた方が、
今の何気ない毎日を、とても大切なものだと思えるんじゃないかと思うのだが。

 

 

シンガーソングライターの小沢健二さんが言っていた。
『世界史年表には「〇〇戦争」とか「〇〇事件」とか、酷いことが並ぶ。
しかし〇〇戦争と××戦争の間には、
「戦争が起こりそうになったがなんとか食い止めました(汗)事件」
が何度もあっただろう。
戦争の歴史を裏返すと、ひそかに平和の歴史がある。
名前のない平和を維持した大勢の人々に敬意です。』