手紙

初めて会ったのは10年前かな。確か、夏の終わりだったね。
人のことは言えないけど、転んだだけでどこか折れそうなくらい細かった。
薄着でね、日焼けもしてたかな。だから、さらに細く見えたよ。

 

思い出すのはいつも、6年生の過去問指導のときのこと。
丁寧にやれ!適当にやるな!ちゃんと式書け!
違う!!!教えた通りに手を動かさないと!!!
って、たくさん叱った。叱ったなんてもんじゃないくらい叱った。
叱って叱って、なのに、全くへこたれずに何度も質問に来た。
ガッツあったよな。
周りの先生たちが、「あの2人、またやってるわ!」
って、遠巻きに微笑みながら見ていたのも含めて懐かしいよ。

 

 

激励会にも参加してくれたね。
大学生活を楽しんでいる様子だった。髪も染めちゃって。

見た目、好青年。だけど小学生のときと変わらず子どもっぽくてお調子者。
卒塾してから背はぐんぐん伸びて、あっという間に追い抜かされたけれど、
相変わらず僕よりも細くて。
運動系の部活をやっていたのにひ弱で。
なのに、会ったときは、わざわざちょっかい出してくるから。
とっちめると、あっという間にやられて。

 

僕のことを呼び捨てで呼ぶ少々ナマイキなやつだったけど、
慕ってはくれてたのかな。
大学受験の前には、どこの予備校に通ったらいいかと相談にも来た。

可愛いやつだった。


懐かしいなぁ。

 

中学受験の前に、本気で叱った子ほど、心にずっと残ってるって話したろ?
ずっと残ってんだよ。ずっと気になってんだよ。
毎日会ってたわけではないけど、もう会えないって。
いつか突然、またフラっとやってきそうな、そんな気がする。
頭も心も追いつかないよ、さすがに早すぎるだろ。

佐野先も泣いてたぞ。
せっかく二十歳になったのに、まだ飲みにも行ってないじゃないか。
夢に出てきたらぶん殴るってさ。
まぁ、そんなこと言いながら、あの毛むくじゃらの腕で抱きしめるのかもな。
だから、夢に出るときは覚悟して出ろよ。

 

夢の中でもヤンチャしてとっちめられて、やられながら笑ってんのかな。
いいさいいさ、思う存分、楽しんでくれよ!!!
一緒に過ごした時間、楽しかったよ!ありがとう!!!