手を動かす

サーパスのテスト(算数)は、答えを間違っていても、
途中の式が合っていたら部分点をあげます。
式を間違っていても減点にはしませんので、書けば書くだけお得なわけです。
しかし、どれだけ言っても、式を書いてくれない子がいます。

もちろん式がなくても、答えがあっていれば○をしますし、その分の点数を加算します。
ただ、その1問が○か×かよりも、点数が5点上がるかどうかよりも、
大事なことがあるということに、気がついて欲しいと思います。

卒業生が書いてくれた受験体験記の中に、こんな文がありました。

『2つ上の姉と共にサーパスにお世話になりました。
僕が感じたサーパスの魅力は、
1人1人の性格に合わせた指導をしてくれることだと思います。

例えば、質問に対する対応についてですが、
分からないとすぐ質問に行く僕はよく
「もっと考えろ」と真剣に考えることを求められました。

なかなか質問に来ないで長い時間考えている姉には、
「考える時間を3分とか5分とか区切って、質問に来て理解した方がいい」
と言って、入試に対応できるスピードを伝えていました。』

弟って、よく見ているなぁと感心します(笑)。

私は、お姉さんにも弟くんにも、算数を教えていましたが、
お姉さんは、負けず嫌いでもあったのでしょう。
「わからない」と絶対に言わない子でした。
そして、算数を己の腕力で解き切る力強さがありました。
(ここでいう腕力とは、腕の筋力の意味ではなく、粘り強く解く姿勢のことです。)

テクニカルに美しく解こうとするあまり、丁寧な作業を疎かにする子は、
できる子と言われる子の中にも多いです。
しかし彼女は、普段から図や式をきちんと書き、
一見どこから手をつけていいかわからないような問題に対しては、
調べ上げたり数え上げたりしながら、手がかりを探していました。
制限時間のある受験勉強でさえなければ、
修正する必要のない、素晴らしい勉強の仕方だったのではないかと思います。

一方、弟くんは、負けず嫌いのお姉さんとは対照的に、
塾に来た当初、別に負けてもいいやという感じでした。
決して不真面目だったわけではないのですが、
一事が万事、淡泊な思考をしている印象でした。
その頃は、自信がなかったというのが大きかったかもしれませんが、
じっくり腰を据えて考えることを、めんどくさがっているようにも見えました。

しかし、「図を描いて考えて!」「もっと手を動かして!」「白紙で質問来ないで!」
と突き放されても、くらいついてくる気持ちの強さがありました。
そのうち彼は、手を動かしながら考える力をつけていき、
最初の印象からは想像もつかないほど、成長したのです。

毎日、あるいは毎週のカリキュラムをできるようにしていくことで学力が上がって、
志望校合格に近づくというイメージは、決して間違いではありません。
逆に、今日のカリキュラムをうまく消化できないと、
焦ったり不安になったりすると思います。
本人だけでなく、お家の方が不安になることもあるでしょう。

入塾当初の弟くんにも、課題を終わらせること、
もっと言うと、課題を終わらせることで、自分やお家の方を安心させることが、
目的になってしまっていた部分があったのかもしれません。

しかしある時、課題をただ終わらせることよりも、
自分で考え抜くことの方が楽しいと感じられたのではないかと思います。

答えに○がつくことが重要でないとは言いません。
○がつくことで、理解の度合いを確認できたり、自信がついたり、
という効果があるのは、もちろん言うまでもないことです。
しかし、答えに○がつくかどうかよりも大事なことを、
彼は体得したのだと確信しています。