幸せなこと

10年以上前に教えたM君は、

小学生の頃から地元ではちょっと有名なサッカー少年だった。

市の代表、県の代表として海外遠征に行くぐらいの実力の持ち主だった。

このレベルになると、毎日サッカーボールに触れていないといけないのだろう。

ちょっとした時間さえあればボールを蹴っていた。

いざ受験生になって

「勉強を頑張ろう!しばらくボールを蹴るのも我慢する!」と自分で決心した時も、

やっぱり我慢できないみたいで、まるで禁断症状のように

(塾の中で)ピンポン玉や靴下を丸めたものを使ってリフティングしていた。

「毎日サッカーボールに触れていないといけない」と先に書いたが、

これはサッカーに限らず、他でもそういうことはあると思う。

野球でもバスケでも、ピアノでも。

そうでなくちゃ、きっとうまくはならない。

でも本当は「毎日触れていないといけない」と思っている子より、

「触れたくて仕方ない」子の方がグングン上達するのだろう。

いわゆる「やらされている」練習ではなくて、

練習とも思わず、ただただ「楽しい」からやれるのなら、

これが上達への一番の近道だと思う。

もちろんそれだけでプロになれるくらいうまくなるかと言われたら、

それはわからないけれど、プロになれるならやる。なれないならやらない。

なんてことを考えているような人は、きっと最初から向いてないんじゃないかと思う。

M君は今もサッカー選手である。

ものすごく有名な選手ではないかもしれないけれど、

自分の好きなことをずっと続けられているのは幸せなことだと思う。

勉強もやはり「やらされる」ものではなく、「楽しめ」たら一番いい。

算数は勉強じゃないから勉強時間としては数えない!くらいだったらいいな(笑)。

もっと言うと、誰もかれもがサッカーがうまいわけじゃない。

運動苦手!運動きらい!って子だっていると思うし、

算数大好き!って子もいると思う。

サッカー大好き少年が時間さえあればボールを蹴っていたように、

算数大好きっ子が時間さえあれば算数をやっていたって、いいでしょう?

本好きな子が時間さえあれば本を読んでいたっていいじゃないですか!

それを外で遊ばないなんて子どもらしくない!

なんて言葉で片づけたとしたら、何か違うと思う。

好きなことがあるのは、それだけでとっても幸せなことだと思う。