チーム強化と親心

東京都でそれなりに野球の強い高校で、

その野球部のOB(卒業生)の方が後輩の指導を手伝っていた時の話を聞いた。

最近一番困っているのは、

「どうしてウチの子がレギュラーじゃないんですか?」

と親御さんに聞かれることだそうだ。

手伝いをしているだけで、監督やコーチのように選手を選ぶ権限は無いから困る、

ということもあるが、それ以前にスポーツなどは特に、

実力至上主義のところがあって、

甲子園などに出てくるチームでも3年生ではなく1年生がレギュラーだったり、

エースピッチャーだったりすることがある。

「どうしてウチの子がレギュラーじゃないんですか?」と聞かれても、

それは基本的に実力が足りないからでしかない。

あるいは、実力で言ったらそんなに差はないけれども、

戦術の問題で選べないとか、ひょっとしたら監督との相性が悪いとか、

そういったこともあるかもしれない。

「そんな!ヒドイ!」と思う気持ちはわかるけれども、残念ながらこれは、

マンチェスターユナイテッドの香川がレギュラーになれないことや、

ルーニーまでもがベンチスタートであることからも、

わかって欲しい部分であるのだと思う。

しかし、「ウチの子はこんなに練習しているのに…」とか、

「あの(レギュラーの)子と比べて、ウチの子の何が劣ってるんですか!?」とか、

そういう場面が本当に多いらしい。

そして実は、かわいそうなのは当の高校球児でもあり、

彼らはまだレギュラーになれるだけの力が無いことを

自分で自覚しているケースの方が圧倒的に多いのに、

その彼ら(高校球児)を通り越して

親御さんがヒートアップしていることなのだそうだ。

感情の部分ではその親御さんの気持ちは十分に理解できるけれど、

それをいちいち聞いていたらチームは強くできない。

自分たち(指導者)も練習させる方に集中できないんだよ…と嘆いていた。

僕らの仕事はそこまで大変ではないけれども、

どこも大変なんだなと思いながら聞いた次第である。