「大発見」と「偉業」

先日のうれしいニュース、ご覧になりましたか?

ノーベル医学生理学賞を京都大学の教授である山中伸弥氏が、

見事に受賞されました。

医学生理学賞の受賞は実に、25年ぶりだということです。

日本人のノーベル賞受賞者というと、

化学賞や物理学賞が飛び抜けて多い印象でしたので、

ニュースを知ったときは「日本人初?」と思ってしまいました。

そもそも、ノーベル賞って何なのでしょうか。

ノーベルの由来はもちろん、アルフレッド・ノーベル氏。

ダイナマイトの発明で巨万の富を得たノーベル氏は、

遺言にこう残しているそうです。

「私のすべての換金可能な財は、次の方法で処理されなくてはならない。

私の遺言執行者が安全な有価証券に投資し継続される基金を設立し、

その毎年の利子について、前年に人類のために最大たる貢献をした人々に

分配されるものとする。」

ノーベル賞には、

「化学賞」「物理学賞」「医学生理学賞」「文学賞」「平和賞」「経済学賞」

の6つの部門があります。

日本人は経済学賞以外の5つの賞で受賞しています。

さしずめ、その分野において人類にとって大きな貢献をした人物に

贈られる賞といったところでしょうか。

また、受賞においては名誉だけでなく、賞金も出るようです。

とはいえ、ノーベル賞のための研究や行動ではなく、

結果としての受賞がほとんどでしょう。

自分の興味のある分野をとことん突き詰めて、

それが世界的に評価されるということは、

まさに学者冥利に尽きる賞ではないでしょうか。

今回の山中教授の受賞した功績はずばり「iPS細胞」です。

常日頃、アンテナを張っていれば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。

「万能細胞」というものです。

体のあらゆるものを作ることが出来る細胞ができたということです。

皮膚から骨を作ったり、髪の毛から内臓を作ったり。

これによって、「再生医療」という新しい医療が実現できるかもしれません。

例えば、じん臓が必要な人がいたとします。

そうなると、じん臓を他の人からもらうしかありません。

すぐに、もらうことができればいいですが、すぐに現れるとは限りません。

もし、見つかったとしても、その人の体にちょうどいいじん臓ではないかもしれません。

そうこうしているうちに、病気は進んでしまい、命に関わるかもしれません。

これが「再生医療」だと、こんなふうになるかもしれません。

じん臓が必要な人がいます。

その人の髪の毛をもらいます。

その髪の毛からiPS細胞を作ります。

そして、その細胞をじん臓に成長させます。

自分の体から作ったじん臓なので、動かないかもしれないという不安もありません。

治す医療から、作る医療へ。

まさに夢のような話です。

とは言え、まだクリアしなければいけない課題も多くあります。

iPS細胞を作る際に使うウイルスが、期待通りの動きをするのかという問題。

作ったじん臓が、きちんと働いてくれるのか。という問題。

作ったじん臓が、がんにならないか。という安全面の課題。

これらの課題を克服し、実用化される未来のために、

今も熱心に研究はすすめられています。

そんな大発見も印象深いですが、心に残ったのは山中教授のこの言葉。

「まだたった1人の患者も救っていない。」

どんなに優れた大発見でも、独りよがりであっては本末転倒。

誰かに役立ってこその偉業。分野は違えども、学ぶことは多いです。