イチロー

夏期講習2日目、朝からビッグニュースが飛び込んできた。

「イチロー、ヤンキース移籍」報道である。

正直、かなり動揺した。

「一体、何があったんだ?」という疑問は、

イチロー自身の記者会見によって案外早く解決したが、

このニュースについて誰かと熱く語りあいたいという欲求は、

講習の忙しさで満たされることがないままである(笑)。

ヤンキースは、偶然か必然か、イチローの移籍が決まったその日から、

(今までイチローが在籍していた) シアトルマリナーズの本拠地

セーフコ・フィールドで、3連戦をおこなうことになっていた。

そして、イチローは移籍したその日に早速8番ライトで先発出場を果たす。

その注目の第一打席。

イチローはストイック過ぎて面白くないとか、

話が偉そうだ、傲慢だとか言う人がいる。

人それぞれ好きなタイプ合わないタイプはいるだろうし、

イチローも全ての人に好かれたいなんてきっと考えてもいないだろうから、

それはそれでいいと思う。

しかし、この第一打席で、

イチローがいかにシアトルのファンに愛されていたかがわかった。

イチローが打席に登場すると、

スタンドからはスタンディングオベーションと惜別の大歓声

イチローコールが巻き起こったのだ。

そしてその歓声にヘルメットを取って深々と頭を下げたイチローは、

古巣相手の初打席で初球をセンター前ヒット。続けざまに盗塁まで決めて見せた。

イチローがヒットを打つたびにスタンドにいるファンが更新する

イチメーターもマリナーズ在籍時と変わらず更新された。

長年(11年半)在籍したチームを去る時、こうした形で見送られるのは

本当に素晴らしいことだと思う。

もちろん寂しさはあるに決まっているけれど、こんな素敵な見送られ方は

そうそう誰もが経験できることではない。

僕はその一連の流れをテレビで見ていて、生放送でも無いのに泣いてしまった。

イチローは僕の好きな選手の一人だ。

ちょうど彼がオリックスの1軍に定着しようかという年のオープン戦で、

「今年からきっとブレイクするから、注目しといて!」と

友人に勧められたのが彼を見た最初だったが、

そこから本当にあっという間に世界屈指の野球選手になっていった。

「小さなことの積み重ねが、とんでもないところに行くひとつの道。」

という彼の言葉は有名すぎるほど有名だが、

イチローはバットやグローブをとても大事にすることでも有名だ。

こんな言葉がある。

「バットの木は、自然が何十年も掛けて育てています。

僕のバットは、この自然の木から手作りで作られています。

グローブも手作りの製品です。一度バットを投げた時、

非常に嫌な気持ちになりました。

自然を大切にし、作ってくれた人の気持ちを考えて、

僕はバットを投げることも、地面に叩きつけることもしません。

プロとして道具を大事に扱うのは当然のことです。」

彼が小学生の頃に書いた作文が何かのCMで使われて有名になったが、

小学生なのに本当にすごいなと思うのは、

目標があって、そしてそこへの具体的な努力をしっかりしていることと、

感謝の気持ちを持っていることである。

バットやグローブに対する発言からも、

彼を支える環境への感謝の気持ちが表れていると思う。

最後に、イチローの名言の中で、受験生にも通じる言葉を紹介したいと思う。

「できなくてもしょうがない」は、終わってから思うことであって、

途中にそれを思ったら、絶対に達成できません。」

「努力せずに何かできるようになる人のことを、天才というのなら、

僕はそうじゃない。

努力した結果、何かができるようになる人のことを、天才というのなら、

僕はそうだと思う。」

「キライなことをやれと言われてやれる能力は、後でかならず生きてきます。」